2014/09/08

Response to Transmutation-Reality or Macrobiotic Fairy Tale原子転換―現実か、マクロビオティックのおとぎ話か?に対する回答

エドワード・エスコー

















現代科学はおとぎ話か?
低エネルギー原子転換が神話(おとぎ話。疑似科学。)であるか、現実であるかを考える前に、現代科学こそがおとぎ話であるとする理由を考えてみよう。20世紀初頭におけるアインシュタインの等式と(その後の)量子論を受け、現代物理学は実際の実験に基づいたモデルから旅立ち、数学を基本とした純粋理論モデルへと移行した。アインシュタイン自身でさえ、現実の世界で実際に実験を行うのではなく、いわゆる「思考実験」を通じ多くのアイデアを考えだした。

 アインシュタインの相対性理論に基づき発生したモデルが、いわゆる「ビッグバン理論」である。ビッグバン理論では、約130億年前に、強大な爆発が起こり全ての宇宙が始まったとしている。爆発前、全ての銀河、銀河団、星、惑星、星間塵とガス、ありとあらゆる生物を含め、全宇宙は「特異点」という極小点の中にあった。

 ビッグバン理論は純粋に数学的構造で成り立っている。地球上での実験や現象の観察を通じ証明あるいは否定されてもいない。何百万もの銀河を包含する極大フィラメント(それぞれの紐が銀河である光の紐が数百万光年にも渡り伸びている巨大なクリスマスツリーのようなもの)の発見は、宇宙が実際には130億年よりもずっと古く、ビッグバン理論と矛盾することを示す。そうした巨大な構造物が生成されるには130億年以上の時間が必要である。

1986年、天文学者たちは、幅30億光年、厚さ10億光年、直径30億光年にも伸びる超銀河団を発見した。そのような銀河団ができるには800億年を要する。

1989年、長さ50億光年以上、幅20億光年、厚さ1500万光年に及ぶグレート・ウォールと呼ばれる銀河の広がりを発見した。そのような構造物ができるには1000億年を要する。

2003年、天文学者たちは、長さ133600万光年の超銀河団、スローン・グレート・ウォールを発見した。そのような銀河団ができるには2500億年を要する。

 ビッグバン理論に挑戦を挑む別の研究は、クエーサー(準星)の研究である。従来の天文学では、クエーサーが宇宙で最も遠くにある星だと教えている。クエーサーの高赤方偏移は、それが膨大な速度で後退していることを示す(物体の赤方偏移が高ければ高い程、後退速度も速くなる、と標準天文学は教えている)。

 ところが、高赤方偏移を持つクエーサーが低赤方偏移の銀河と関係があるとする発見は、赤方偏移と後退速度の等式議論に疑問を投げかける。典型的ではない銀河を研究していた際、天文学者のホルトン・アープは、高赤方偏移クエーサーが近くの銀河と結びついていることを発見し、実際は、活動的な「親」銀河から放出されたのかもしれないと考えた。アープは、後退速度は赤方偏移を決定する唯一の要因ではないかもしれないと理論的に考えた。彼は、赤方偏移の速度要素とそれが元々持つ生来の要素を分けてみた。典型的ではない銀河研究を通じ、アープは、本質的な要素とは、物体年齢の機能であると結論づけた。つまり、低赤方偏移銀河と関連する高赤方偏移クエーサーは比較的若い物体だったのだ。

クエーサーは、宇宙で最も遠方の物体では決してなく、実際は比較的近隣の銀河系の一部であるかもしれない。この発見は、ビッグバン理論の根拠である膨張する宇宙論に疑問を投げかける。
(この点に関してはThe Big Bang Never Happened, by Eric Lerner, Vintage Books, 1991Seeing Red: Redshifts Cosmology and Academic Science, by Halton Arp, Aperion, 1998を参照)

 実験で確認されない限り、ビッグバン理論はおとぎ話のままだ。ビッグバン理論に対する批判がますます高まってきているが、主流派の科学、メディア、一般大衆にはこれまで通り福音として受け入れられ続けている。

 ビッグバン理論の欠点が明らかとなるにつれ、理論物理学者たちは、その矛盾を覆うように独自の数学的説明を施している。彼らは、「ダークマター」「ダークエネルギー」「ブラックホール」「ひも理論」「ワームホール」などの概念を発明した。こうした純粋に観念的な概念発明の代表的先導者がイギリス人の物理学者であり人気作家であるステファン・ホーキングである。こうした想像物はどれも現実を反映してはいない。実験で証明されるか、否定されるかされねばならず、一般大衆だけでなく科学界の多数により事実として受け入れられなくてはならない。

電気太陽か熱核太陽か
 理論物理学と宇宙論(宇宙の起源と発展の科学)の見解に、太陽は熱核反応炉であるというものがある。現代の宇宙論者は、継続的に爆発し続けている水素爆弾が太陽であり、そこでは高温・高圧の下、水素がヘリウムに転換されている、と述べている(水素は最初の元素であり、ヘリウムは2番目である)。

 熱核星モデルは、ニュートンの万有引力の考えに基づいており、星の重力が物質同士を押し付けている。水素爆弾のように、膨大な求心力(内向き、陽性な力)が高温、高圧を生み出す。この力により原子が分裂し、後に融合する。このプロセスを通じ膨大なエネルギーが放出され、熱、光、荷電粒子、放射線(陰性)が生まれる。
 重力モデルでは、太陽のエネルギー源は太陽自身の重力だ。太陽はその中心に質量を引き寄せている。そしていずれ、その核燃料の供給が枯渇し、燃え尽きることになる。














写真)太陽コロナが電弧を出す様子

 ところが、熱核太陽という概念は別のモデルからの挑戦に直面している。このモデルは日本のひので衛生やNASAのテミス衛生などの衛星観測だけでなく、プラズマと電気の研究に基づいている。また、太陽コロナ、太陽風、太陽黒点、月食・日食時の半影や、太陽フレア、太陽紅炎、コロナ質量放出などの劇的な出来事にも基づいている。電気太陽仮説は、太陽エネルギーの源は太陽自体ではなく、それを取り囲む電気的に帯電した媒体―銀河―だと仮定している。そのため、太陽は重力を動力とした熱核反応炉ではなく、巨大な導電体である。重力に基づく熱核太陽への批評家は、重量は実際には宇宙で最も弱い力だと指摘している―電気エネルギーは重力のおよそ1039強い。

 約70年前に、天文学者であり電気研究者のC.E.R.ブルース博士は、太陽に関する新しい仮説を提示した。彼は、太陽とは放電現象だとし、次のように主張している:

「(太陽の)光球に外観、温度、電弧のスペクトルが現れているのは偶然ではない。弧(アーク)の特徴があるのは、太陽が電弧あるいは、非常に多くのアークが連なったものだからだ。こうしたアークは、近くの蓄積された空間電荷を素早く中和し、消える。従って、それは安定的な放電ではなく、瞬間的な閃光のように見えるかもしれない。このようにアークは常に現れ、消える。太陽表面で観察される粒状帯はこの往来のためである。」

 この仮説によると、我々の銀河内に存在する大部分の空間はプラズマ(荷電ガス)を含んでいる。プラズマは電子(マイナスの電荷)とイオン化原子(プラスの電荷)でできている。プラズマ内にある全ての荷電粒子には、ボルトと呼ばれる電位エネルギーが存在する。太陽は、ヘリオ層と呼ばれる巨大なプラズマ細胞の中心に位置し、ヘリオ層は冥王星の半径の数倍にも広がっている。その半径はおよそ180km、地球から太陽までの距離の122倍とされている。

 太陽は、その周辺に存在する荷電空間よりも強いプラスの電荷を帯びている。外側からマイナス電荷の電子が太陽に入り、プラス電荷のイオンが太陽から抜け出すことで、放電プラズマ実験で観察されるのと同様のプラズマ放電が発生する。太陽は自らの内部からではなく、太陽に向かってくる我々の銀河腕から流れる電流から力を得ているのかもしれない。太陽のプラス電荷はプラズマ放電における陽極の役割を果たす。マイナス電荷である陰極は、上でみたように太陽から約180km離れたヘリオ層の端に存在する遠い空間から発生している。
(この点に関してはThe Electric Universe, by Wallace Thornhill and David Talbot, Mikimar Publishing, 2007参照)

桜沢の宇宙論
 ビッグバンなかった論や電気太陽-電気宇宙などの代替仮説は、従来のビッグバン理論や熱核太陽と比べ桜沢の宇宙論にかなり近いものだ。桜沢が定義したマクロビオティックの宇宙論では、無限の拡散性から発生する対数スパイラルの形で宇宙は絶えず現れてきている。無限という一つが空間と時間、始まりと終わり、表と裏、など我々が住む相対界を定義する無数の両極を生みだす。両極とはマクロビオティックでは陰陽と表現され、絶えまない動き、エネルギー、変化、進化を生んでいる。

 本質的に、宇宙はエネルギー、波、波動で構成されており、それらはゆくゆく凝縮し物質となる。スパイラルは内向きの(求心的な)方向に形成される。純粋で拡散的なエネルギーはますます陽性(圧縮)になり、電子、陽子、中性子などの素粒子、原子・元素の世界、植物界、そして最終的に動物と人間の世界を生成する。












写真)宇宙は対数スパイラルの良い例

 マクロビオティックの世界感では、宇宙は時間のある一地点で創生されたのではなく、桜沢と久司が名づけた「創生のスパイラル(物質化・具現化)」を通じ絶えず創生されている。宇宙は常に新しい。銀河、星、惑星は出現し、しばらくの間存在し、その後宇宙の法則に従い宇宙サイクルに消失する。新しい銀河、星、惑星がまた現れ、同じ宇宙の法則に従って振る舞う。普遍的な変化の法則―陰は陽に、陽は陰に―は、時間と空間を超越し存在する。創生のプロセスは、まさにこの瞬間にも宇宙の至るところで起こっている。そのプロセスには始まりも終わりもないのだ。

 桜沢は、スパイラルの発生は周縁、つまり外側から始まり、中心へ内向きに進むと考えていた。中心地でスパイラルはコースを逆転させ、周縁へ戻るよう外側に向かう。銀河はこのパターンに習い、我々の太陽系も同様だ。桜沢、そして後に久司道夫も、太陽のエネルギーはその内部からではなく、太陽を中心とするスパイラルの周縁から発生していると指摘していた。電気太陽仮説の擁護者は、このスパイラルをヘリオポーズ(太陽系圏)と捉え、太陽に動力を与えるエネルギーは周縁(陰)から発生するのであり、中心(陽)からではないことに同意している。太陽の動力源は電気的なものであり、重力でも原子核力でもないと主張しているのだ。

 マクロビオティックの宇宙論では、太陽系、銀河、そして宇宙自体も、外側から内へ創生されたのであり、ビッグバン理論や重量-太陽モデルのような内側から外へ、ではない。

桜沢の原理
 桜沢の宇宙論では、二つとして同じものは存在しない。常識はその事実を物語るが、これは現代の理論科学と矛盾する。理論科学では、全ての陽子も、全ての電子も、全ての中性子も、その他あらゆる素粒子も互いに同一とみなす。

 そのため、当該元素の全ての原子もまた同一と考えられている。大気中の酸素原子は全て、その他の原子同様、同じでなくてはならない。指輪内の全ての金原子は、指輪内のその他の金原子と同じでなくてはならない。玄米という穀物内のある炭素原子は、その穀類内の他の炭素原子と同じでなくてはならないだろう。

 ところが、桜沢による何も同じものは存在しないという主張は、現実界において、二つとして同じ原子あるいは素粒子は存在しないということを意味する。電子も中性子も全く同じものは存在しない。それ自身を構成する原子や素粒子は、まるで雪片や葉っぱ、人間の声、指紋のようなものだ。基本的なパターンを共有するが、互いに全くユニークなものだ。

 したがって、メアリーの金の指輪内の原子と素粒子は、ジェニファーのそれとは同一ではない。米という各穀物が独特の化学構成で成り立っているだけでなく、原子、素粒子も全く独特なものだ。それぞれの穀物には、独特の原子と素粒子プロフィールがある。非同一性の原理は宇宙のあらゆる現象に当てはまる。

 原子核内の陽子はプラスの電荷を帯びている。周縁を周回している電子はマイナスの電荷を帯びている。中性子は電荷を帯びず、電気的に中性である。承知の通り、二つのプラス電荷を帯びた物体(陽性)は互いに反発しあう。陽は陽を排斥する。二つのマイナス電荷を帯びた物体(陽性)も同様に互いに反発しあう。陰は陰を排斥する。プラス電荷(陽性)はマイナス電荷(陰性)を引き付け、逆も同様である。陽性は陰性を、陰性は陽性を引き付ける。この法則に従い、地上の状況下において、プラス電荷の陽子から電荷を得ている原子核は、常に互いに排斥する。原子核は互いに融合することを妨げられている。

 マティアスが指摘したように、原子核間に存在する電気排斥力はクーロン障壁として知られている。標準物理学によると、この障壁は、非常に高温、高圧、高エネルギーという最も極限状態下でのみ突破可能である。障壁を突破し、核が融合するためには、核爆発に匹敵するほどの膨大なエネルギーが必要なのである。そのため、標準理論では低エネルギー原子転換は不可能とされているが、頭に留めておきたいことは、この想定の根拠が、全ての陽子と他の素粒子が同一という概念の上に成り立っているということだ。

 ところが、非同一性の原理は、クーロン障壁が相対的なもので、絶対的なものではないと教えている。二つとして同じ陽子が存在しないのであれば、両者間に、極わずかであっても、ある程度のひきつけあう力が存在しなくてはならない。おそらく、障壁を中和し、数パーセントの原子核が融合できる十分なくらい、熱、圧力、電気エネルギー等、外部の状態を操作することで、そのひきつけあう力を高めることが可能かもしれない。

 また、桜沢の宇宙論では表あるものには裏があると教えている。表が大きく、力強くなるにつれ、裏も同様になる。この原理はアイザック・ニュートンも主張している:「あらゆる行為(アクション)には、同程度、反対の反応(リアクション)が存在する。」そのため、二つの原子核が互いに排斥し合う際、二つは引き合ってもいる。排斥しあう力が強い程、引き合う力も強い。クーロン障壁の排斥力は強大だが、その背後にある引き合う力は同程度に強い。ここでも外部環境を操作することで、排斥のクーロン力を、同程度に強力な引き合う力に転換し、核融合を生むことができるかもしれない。

大は小を引き寄せ、小は大を引き寄せる
 反対のモノは引き合い、同じものは反発するという主張と共に、桜沢は宇宙の秩序のある定理として別のプロセスを主張した。この定理によれば、大陰は小陰を引き寄せ、大陽は小陽を引き寄せる。この定理により、我々は原子転換というプロセスを通じ、二つのプラスの電荷を帯びた陽子が融合し大きな原子となる理由が分かる。実際のQR実験の例を見てみよう。












図)リチウム(左)と硫黄(右)

 リチウムの原子核を見ると(上図左)、3個の陽子と4個の中性子で構成されている。上図右の硫黄には16個の陽子と16個の中性子が含まれている。陽子と中性子の数が元素の質量を決定し、原子を周遊する電子の数は原子番号を決める。プラスの電荷を帯びた陽子の数は、通常、マイナスの電荷を帯びた電子の数と同じであるため、原子は電気的に中性を保つ。

 リチウム原子核内の3個の陽子と4個の中性子を合算すると、質量7を得る。硫黄原子核内の16個の陽子と16個の中性子を合算すると、質量32を得る。(リチウムは通常7Li、硫黄は通常32Sと記述する。)このことは、硫黄の原子核はリチウムの原子核の4倍重いということを意味する。プラスの電荷を帯びた原子核は陽性であるが、硫黄はリチウムよりも4倍陽性となるため、硫黄は大陽と言え、リチウムは小陽と言える。桜沢による定理が正しければ、リチウム(小陽)と硫黄(大陽)の間には引きつけある力が存在することなる。この力がクーロン障壁を相殺し、次の原子転換の公式を説明してくれるかもしれない:

7Li + 32S → 39K

 2009年から12年までQRで行われた10回の実験で、QRチームは真空化で、銅電極上にリチウムと硫黄を設置した。電極に十分な電気が帯びた結果、プラズマが発生した。実験が終わると、実験後のサンプルを集め、外部機関へ分析に出した。10回の実験中どの分析結果も、クウォーツ管内の極わずかな量を除き、実験素材にカリウムを導入していないにも関わらず、カリウムの存在を示した。カリウムの析出量は最低で3PPM(百万分の一)から最高で750PPMの範囲だった。
(実験方法はCorking the Nuclear Genie, by Edward Esko and Alex Jack, Amberwaves Press 2014”参照)


ナトリウムからカリウムへの転換実験―誤った解釈
 マティアスは、「桜沢は、実験管でナトリウムと酸素をカリウムに転換したと主張したが…残念だが、実験を再現した者はいない」と主張した。桜沢による公式は次の通りだ:

ナトリウム(23Na 酸素(16O) → カリウム(39K

 ところが、QRが実験したリチウムと硫黄をカリウムに転換する実験を注意深く観察してみると、この実験も実際には桜沢の実験と同じであることが分かる。公式は次の通りだ:

ナトリウム(23Na 酸素(16O)→リチウム(7Li)
酸素(16O)+ 酸素(16O)→硫黄(32S
リチウム(7Li)+ 硫黄(32S)→カリウム(39K

 上の公式では、ナトリウムから酸素を引きリチウムが得らえる一方、酸素と酸素が融合することで硫黄が得られる。実験ではナトリウムの代わりにリチウムが、酸素の代わりに硫黄が代用された。原子転換生成物のカリウムは桜沢の実験と、QRの実験と同じである。マティアスの主張に反し、若干異なってはいるが、桜沢の実験は「実際は」再現されていたのである。

小宇宙=大宇宙
 QRの実験で使用された真空管内の発光を見ると、QR実験管(左)と銀河系星雲(右)の側面は驚くほど似ているのが分かる。












真空管実験で我々は、宇宙空間と同様の状態を創ろうとした。両極あるいは陰陽は、銀河内および真空管内のエネルギーの流れを活発にする。電流は、数インチ離れた陽極と陰極間を流れる。同様に、10万光年離れた銀河で正反対の電荷を帯びた対極間を電流が流れる。おそらく、この非常に強く荷電したプラズマ場内において、終わりのない原子転換プロセスにおいて元素が絶え間なく生成されているのだろう。QRの実験管内においても非常に強く荷電したプラズマが存在し、無限に小さい規模で原子転換が発生しているのかもしれない。小宇宙は大宇宙と同じであり、上も下も同じなのだ。

ノン・クレド
 桜沢如一、久司道夫、QRチーム、世界中の研究者たちは皆、「ノン・クレド(何事も盲目的に信じず、自ら証明せよ)」の精神で低エネルギー原子転換の研究を行っている。桜沢如一は、この精神がマクロビオティックの実践と理解の核であると述べた。我々もクウォンタム・ラビットの研究を行う際には、この精神で行っている。

 研究を進める動機となったのは、桜沢や久司が提唱した通り、低エネルギー原子転換が現実におこるのかどうかという関心にあった。多くの初期の実験は何ら成果を示さなかったが、やがて我々が得た成果は実験を継続する励みとなった。我々の実験を描写している論説や論文は、「我々の実験結果は暫定的なものだ。低エネルギー原子転換が示唆されるが、この可能性を認めるかどうかは当然今後の研究を必要とする。」という趣旨で結ぶことが多い。

 マティアスは彼の論説で、QR実験で報告されたいわゆる原子転換生成物の最もらしい発生源としてコンタミネーションを挙げている。数年前に、アレックス・ジャック、ウッディー・ジョンソンと私がMITのピーター・ヘーゲルスタイン博士を訪れた。何十年もの低エネルギー原子転換研究の経験がある彼は、原子転換の批評家は毎回、どれほど実験結果の証拠が説得力を持つモノであったとしても、コンタミネーションを引き合いにだすと警告していた。アインシュタインはいみじくも、「事実が理論に合わないのならば、事実を変えてしまえ」と主張した。我々の多くの実験で、原子転換生成物の検出量は極わずかであるため、実験結果をコンタミネーションに帰することができるかもしれない。それでも、いくつかの実験における生成物はそれに帰するには余りにも大量に検出された。

 例えば、ある実験では、実験前に予想された通り、結果として5300PPM0.53%(0.5%以上)の非常にレアな金属(メタル)が検出された。その生成量は、南アフリカにある最も効率のよい鉱坑で生産される量の1万倍以上だ。そのような大量のレアメタルがコンタミネーションという形で実験に混入したとは考えにくい。コンタミネーションではなく、低エネルギー原子転換が、最も合理的な説明であろう。

 人生の終末に向かい、桜沢如一は熱狂的に低エネルギー原子転換の可能性に没頭した。ビル・ダフティは、1960年代にロング・アイランドで開催されたマクロビオティック・サマーキャンプでの桜沢の講義の話をしてくれた。桜沢は、物質化のスパイラル、波動から元素が生成される方法、周期表がスパイラルに書き換えることができる方法、元素の陰陽分類、ルイ・ケルブランの業績、自身の実験、未来の社会にとって原子転換が意味する重要性などを熱く語っていた。講義の最後に、後ろで聞いていた小柄の老女が立ち上がり、大きな声で質問した。「それは素晴らしわ、オーサワ先生。でも、あなたはどうやってソバを料理するのかしら?」桜沢も周りの皆も大きな笑いに包まれた。

 Macrobiotics Today誌でのぼった原子転換に関するこうした活発な議論を桜沢も歓迎するだろう。科学界の中で、このことに疑問を持ち、ましてや実験してみる研究者など稀だろう。ノン・クレドの精神で我々の実験を検証し、自身の考えをシェアしてくれたマティアスに感謝したい。


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エドワード・エスコー
クウォンタム・ラビットLLCの共同創設者。40年以上マクロビオティックを指導。低エネルギー原子転換に関して書かれたCoolFusionとCroking the Nuclear Geniw(Amberwaves Press発行)も含め、数十冊に上る本の著者・共著者。
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「Response to Transmutation-Reality or Macrobiotic Fairy Tale原子転換―現実か、マクロビオティックのおとぎ話か?に対する回答」は日本CI協会・編集部が和訳したものです。


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2014/09/03

Transmutation-Reality or Macrobiotic Fairy Tale原子転換―現実か、マクロビオティックのおとぎ話か?

マティアス・グラビアク












 近年クウォンタム・ラビット(QR)で行われた実験において、原子転換ではなくコンタミネーションが大きな役割を果たしたとする証拠が見つかったことで、これまでQRが行ってきた実験全てに対し、疑問が持ち挙がった。標準(模型)物理学では、マクロビオティックの文脈で提案されている低エネルギー原子転換は不可能である。QRの実験により(原子転換の)明らかな証拠が見つかったのであれば、既存科学の理論枠組みに挑戦したことになる。少なくとも現在まではその目標には到達していない。

 Macrobiotics Today,Vol55,No1に掲載された記事“ Corking the Nuclear Genie”において、エドワード・エスコーは、 “Cool Fusion”と自ら呼称する低エネルギー原子転換の考えを通じ、核廃棄物除去に寄与できると熱心に説明している。これが上手くいけば、核廃棄物の問題に対し素晴らしい解決策を提供することになるが、重要な前提が存在する。つまり、低エネルギー原子転換という現象が実際に存在する必要がある、ということだ。そのことを証明するためには、予想される反応(結果)の信頼できる再現性があり、実験結果にマイナスに作用する他のあらゆる説明が除外されなくてはならない。

 ここで言う「低エネルギー」とは、通常、核爆発を連想させる大規模エネルギーを用いずに発生する反応のことを指す。桜沢如一が行った2つの実験が、原子転換の「証拠」としてマクロビオティックの書物内で往々にして引用されるが、両方の実験とも、何かと問題を含んでいることが分かった。最初の実験で桜沢は、実験管でナトリウムと酸素をカリウムに転換したと主張し、2回目の実験では、炭素と酸素を鉄に転換したと主張した。残念だが、これまで無数の再現性実験が行われてきたが、最初の実験を再現した者はいない。2回目の実験では、炭素が電気に触れた後、磁気を帯びた。こちらの実験は割と簡単に再現でき、エドワード・エスコー、アレックス・ジャック、ウッディー・ジョンソンらによるQR研究所やその他大勢の研究者により見事に再現された。桜沢と久司道夫が至った結論は、その磁気特性という証拠を根拠に鉄が生成されたというものであった。ところがその後、磁気特性を持つ炭素が存在することが発見され、実験で生成されたのは炭素であった可能性が指摘された。そのため、磁気のみが観察されただけでは、鉄が生成された証拠にはならないということになった。

この文脈で指摘しておくべき重要な名前にルイ・ケルブランがある。彼は生物学的原子転換の可能性を証明すべく1901年から1983年まで生きたフランス人研究者であり、生物の体内で化学元素の転換が起こりうる点を提唱した人物である。桜沢はケルブランの研究を知り興奮し、西洋の原子論は崩壊したと述べたが、ケルブランの研究方法について(生物学的原子転換の支持者からも)疑問が投げかけられ*1、彼の実験を再現しようとする試みは様々な結果を生んだ。ここでも問われるべきは、低エネルギー原子転換を引き合いに出さずに彼の結果を説明できるかどうかだ。この実験は生物学的原子転換の証拠とは考えられないため、一層注意深い分析が必要であろう。

 典型的なマクロビオティックの原子転換実験で得られた証拠は、確定的なものでさえないことが分かった。エドワード・エスコーが取り組んでいるQR研究所では、低エネルギーでの原子転換を論証することを目標としており、桜沢、久司が行った実験よりも厳格な方法で行っていた。これまでの彼らの実験で達成した結果は何なのだろう?QRは、種々の化学元素を用いて、様々な装置で実験を行ってきたが、基本的な考えは同じであった。彼らは、証明書付の純粋な素材を元に、熱と電気を適用し、実験後、外部の研究機関に分析を依頼した。こうした各実験で、原子転換により何の元素が生成されるのかを予想し、分析結果は、そうした元素を突き止めるために使われた。実験以前にそうした元素が検出されていないことを確証するための分析も行われたが、当初から不検出であることをそれが完全に確証するわけではない。実験後、予想通りの元素が何度も検出されたことで、原子転換仮説に有利な結果が得られたように思えるが、それが原子転換の証拠として受け入れられる前に、それ以外の説明も検討されるべきであろう。第一に、コンタミネーションの可能性が指摘される。こうした実験におけるコンタミネーションとは、検出された新たな元素が原子転換により生成されたのではなく、実験素材に存在していた、あるいは、周囲の環境に存在し実験素材と触れることで存在することになった、ということである。実験前後あるいは実験中に素材を扱った際に起こったか、あるいは、予想される痕跡元素を確認するため他の研究機関に素材を梱包し送る際に起こったのかもしれない。エドワード・エスコーは、コンタミネーションの可能性を認め、著書Cool Fusionの中でも指摘している。コンタミネーションの可能性をさらに回避するために、より実験設備の整った研究所でQRの実験を行うべきであることを彼は正しく指摘している。

 起こりうる少々違った別のメカニズムはコンセントレーションというものだ。何らかの化学元素が実験素材中にごく微量にだけ集積していたため検出されずにいたが、実験後には検出されるほどに実験中特定の素材部分に蓄積した可能性がある。この理論はコンタミネーションと同じく、検出された元素が原子転換を通じ生成されたのではなく、それ以前に存在していたと考える。コンタミネーションに関して後述されている点の大部分はコンセントレーションにも当てはまる。特にこうした元素の同位体構成は自然界に存在する同位体構成と非常に似通っており、原子転換の場合には望ましい結果とならないのである。

 QRの直近の実験では、ヨウ素とリチウムの原子転換を通じバリウムが生成される、とする仮説をテストしていた。過去数年の実験とは異なり、この実験では原子転換の生成物とコンタミネーションとを区別できるような配慮がなされていた。考え方は非常に単純だ。ほんのわずかだが質量が異なる別のバリウムが存在するのだ。そのような化学元素は同位体と呼ばれる。エドワード・エスコーが提案したヨウ素とリチウムのバリウムへの原子転換反応の結果、134Baと呼ばれるバリウムのみが生成されるはずである。数字の「134」は質量を意味し、他のバリウム同位体よりも若干軽い。他方、地球上どこにでも存在するバリウムは特定の同位体構成比を持っており、大部分は若干重い138Baとその他の同位体である。134Baは、わずか2.417%という割合しか存在しない。

更に言えば、自然に生成されるバリウムは、かなり多数かつ様々な同位体から構成されている。最も構成比が高いのは138Baであり、構成比は71.7%になる。続いて、137Ba11.23%、136Ba7.854%、135Ba6.592%となり、地上で134Baはわずか2.417%しか存在していない。

 直近の実験で追加的に行われたテストでは、実験後に様々なタイプのバリウムの構成比を計測した。計測されたバリウムの大部分が予想通りの反応の結果134Baであれば、原子転換仮説をサポートする確固とした証拠となる。ところが、彼が親切にも私に送ってくれたInfinite Energy誌掲載の記事によると、計測されたバリウムの大部分は138Baであった。これは、138Baがコンタミネーションの結果計測されたバリウムである、とする私の予想通りであった。自然界に存在する最も多いバリウム同位体が138Baであるからだ。その一方で、Cool Fusionモデルによると、ヨウ素とリチウムの原子転換を通じて138Baは生成されない。質量127のヨウ素と質量が7まであるリチウムを合算させても、質量138138Baを生成することはできないからだ。
 このように、QR社の実験はコンタミネーションによる影響を大いに受けていることが分かる。依然として、生成されたバリウムが原子転換を通じ生成された可能性を完全に否定することはできないが、その場合でも、138Baに比べ134Baが幾分過剰に検出されてもよいものである。実験は3回行われ、3回目の実験後に素材上に検出されたバリウムは463ppmと大きな値を占めていたが、134Baの増加は見られなかった。

 通常の138Baの比率71.7%と比べ実験後の比率は70.2%であり、134Baの場合、通常2.417%、実験後2.42%であった。原子転換により134Baが生成されたとすると、予測と比べ134Baの増加はほぼ見られなかったことになる。

 Macrobiotics Today誌のエドワード・エスコーの記事では、「予想通り」バリウムが検出されたとしているが、実際には138Baがその大部分を占めていたとする事実は、原子転換により134Baが生成されるとする予想と全く反対である。

 テスト12では、実験後に其々わずか3.5ppm1.8ppmのバリウムが検出されたが、その大部分が138Baであった。そのことから、その大部分もコンタミネーションの結果検出されたバリウムであることが分かる。その他、138Baに加え134Baもいくらか検出された。自然界で検出される134Ba138Baの比率が130であることを考えると、その検出量がどのくらいであるかは容易に推定できる。検出された138Ba1/30の量の134Baがテスト1では0.085ppm、テスト2では0.043ppm、テスト3では11.19ppm検出された。原子転換を通じ追加的に134Baが生成されたとすれば、その検出量の増加が見られるはずだ。事実、テストを通し微増は確認された。134Baの増加は、テスト1では0.011ppm、テスト2では0.029ppm、テスト3では0.014ppmであった。

 テスト1では、検出された134Ba2.37%、0.09555ppmであり、上記のように0.085ppmよりも約0.011ppm高く、自然界に存在する比率である2.417%からわずかに増加(2.42%)した。テスト2では、増加はさらに顕著で4.04%、0.07272ppmと、予想の0.043ppmよりも約0.032ppm高かった。そのため、この2つのテストにおける同位体構成比は興味深い結果を示しているが、検出された合計質量は非常に小さいため、計測誤りの可能性を惹起させる。別の事実として、I127Li7Ba134の反応を受け生成されるはずがない138Baが、検出された全バリウムの大部分を依然として占めていた。テスト1では70.2%であり自然界の存在比71.7%に非常に近く、テスト2では66.3%で、こちらもそれほど乖離していない。最もらしい結論としては、同様にコンタミネーションが大きな役割を果たしたのであろう。

 原子転換の痕跡を探してみると、こうしたわずかな検出量の増加しか見つからない。従って、463ppmのバリウムも検出した一連のテスト結果は当初非常に有望に映ったが、コンタミネーションを考慮した現実的な評価を導入すると実際には全く異なる様相を呈することになる。

 残念ながら、原子転換をほのめかす134Baの増加は、その検出量が非常に微量であるため、その結果の正確性を疑わざるを得ない。あるいは、検出量が異常に高い値であり、実際には134Baの増加は全くなかった可能性もある。

 このことは次のように考えることでさらに確証を持てる。138Ba137Baの比率は、134Baが原子転換反応により生成された場合に限り、変化しないとされている。そのため、その比率は71.7/11.23%=6.38が自然な値だと想定するが、この値にも若干の変動がみられる。テスト1では6.44、テスト2では6.08、テスト3では5.95であった。原子転換反応とは関係なしに137Ba138Baが変動するのであれば、計測された134Baの増加を余り重要視しすぎるべきではない。

 将来、理想的にはコンタミネーションの可能性が大幅に削減され、その陰に埋もれる原子転換の微量な痕跡を探す手間を省けるような実験装置の下、フォローアップ実験をする価値はありそうだ。

 Infinite Energy誌に提出した記事によると、エドワード・エスコーは127Iと(相対的にあまり存在しない)6Liとの間の核反応の結果132Baが生成され、その反応の間、中性子が放出され、134Baの原子核がその中性子のいくつかを吸収し、より重いバリウム同位体を形成したと述べている。残念だがその説明は間違いだ。質量134より重い各バリウム同位体には少なくとも132Baの同位体が一つ存在する必要があるが、それは検出されなかった。実験後のサンプルは、ごく微量4%程度の132Baがテスト2で最も検出されたにすぎなかった。検出されたバリウムの約92%が134Baよりも重い同位体で構成されていたと説明するには不十分だ。

 簡単に言えば、127I7Li6Liの間には、単純に134Baよりも重い同位体の大部分を生成する元となる中性子が不足しているのである。観察された多量の同位体が自然界での構成率に近いという事実は、実際に観察されたのはコンタミネーションであったとする説に説得力を持たせる。

 直近の実験は、QRで行われた過去の実験で原子転換とコンタミネーションとを相違付ける検証がなされていないことについて疑問を投げかけている。ある種の元素が原子転換を通じ生成されるとする予測がなされ、実験後それが実際に検出された際、原子転換の証拠だと解釈された。検出された元素のいくつかは非常に高い値を記録していたが、ヨウ素-リチウム-バリウムの実験が示す通り、コンタミネーションの可能性を除外できない限り、原子転換の信頼に足る証拠にはならない。さらに、ある以前の実験と直近の実験においてコンタミネーションが主要な要因であったならば、QRで行われた(全てではないにしても)他の実験についても同様に言えるのではないだろうか。

 事実として、従来の物理学ではQRが研究しようと試みた類の核反応は、地球上の小さな研究所は言うまでもなく、太陽の温度と物質密度であっても不可能だと教えている。Infinite Energy92July/August 2010への寄稿文で私は次のように書いた。「従来の物理学では、最も軽い原子が融合する場合であったとしても、クーロン障壁を打ち破るには太陽の内部に匹敵する圧力と温度が必要だと教えています。ところが、QRの実験が提案する、より重い原子を融合させるためには、超新星爆発のような破壊的シナリオしか考えられません。」低エネルギー原子転換と標準物理学の概念を一致させるために、著書Cool Fusionの中でエドワード・エスコーは、量子トンネル効果を挙げ、「比較的低い温度、圧力、エネルギーでクーロン障壁を突破することができる可能性があり、そのような条件下で原子転換が起こる方法」を説明している。ところが、量子トンネル効果は、まさに標準物理学の枠組みで核融合が議論される際に考慮されるものである。量子力学のトンネル効果は、量子理論を考慮に入れていない古典力学では不可能とされる障壁の突破を可能としているが、障壁が高いほど、突破の確率は低くなる。このことは、核物理学においてガモフ因子として知られている。興味深いことに、古典力学では、最小の元素・水素の核融合反応でさえ太陽では起こらないとされている。比較的ゆっくりとしたペースで、こうした反応が可能である理由はトンネル効果にあり、それにより何十億年も太陽が輝き続けることができている。確率としては非常に低いが、太陽の高温のおかげで、衝突する原子核の運動エネルギーの利用を通じ、トンネル効果の発生確率は高まる。太陽にある大量の物質のおかげで、全体的に周辺宇宙に光と熱を発するほどの核反応が起こっている。その一方、重い原子の場合、核内の電気斥力が生み出すクーロン障壁が高くなるため、ガモフ因子によると、そのような核融合反応は起こらず、地球上のあらゆる場所は言うまでもなく、太陽の条件下でも不可能だと考えられている。

 通常の化学反応と、一般的な生物学的原子転換や低エネルギー原子転換の反応との間の大きな相違を理解しておくことが重要である。地球上に存在する条件の下、通常の物質内の原子核は極微小であり、互いに遠く乖離している。原子核をリンゴと同程度の大きさと想定した場合、互いに数マイル離れた距離にあることになり、膨大な排斥電力のためにお互いが接近することができなくなる。ただ、核反応が起こるためには、互いの核が接触する必要がある。そのためには、互いに接近する必要があり、核間に存在する排斥力を克服するために非常に早く動かす必要がある。QRや桜沢が行った実験では、核反応に必要な密度とエネルギーを獲得するのは完全に不可能のように思える。

 化学反応は全く別ものだ。それは、基本的に核の再配列であり、核自体は互いに離れ離れになっている。両方の核間に存在する電子雲が電子と原子核の間に存在する電気引力を通じ分子を一つにまとめている。LiIBaという反応式によりヨウ素とリチウムからバリウムを生成する反応について議論することは、見かけ上、という2H2+O22H2Oとうい反応式により水素と酸素から水を生成する化学反応に非常に類似しているが、両者は全く別の種類の反応である。

 今、ここで述べてきたあらゆることが上手く説明できるように思える。物理学は、低エネルギー原子転換が不可能だと教えてくれる。先述した例を含めQRの実験によると、原子転換に対する納得できる証拠もまだ見つかっていないと結論付けられる。ほんのわずかでも134Baが増加したという点は追試する価値がありそうである。それ以外にQRが進むべき最も有望な道は、将来、より高い確率で原子転換の可能性を示唆できることを願いつつ、原子転換とコンタミネーションを区別する上で有用となる同位体の測定値情報を提供できる実験を考案することであろう。

 結論を述べよう。低エネルギー原子転換は、明らかに従来の科学的理解に真っ向から反対するものである。2つの可能性が指摘できる:従来の科学的理解の大変革を伴うパラダイム・シフトの瀬戸際にいるという考えと、原子転換自体が単に誤りであるという考えだ。後者の場合、原子転換に有利は納得のできる証拠はまた見つかっていない。それでも、原子転換を支持する者は、当然それを容易に諦めることはできない。マクロビオティック界において問題となっているのは、原子転換に関する桜沢と久司の考えが間違っていたのかもしれない、ということだろう。長い目で見た場合、マクロビオティック界の偉大な先人たちの全ての教えを全面的に支持すべきではないだろう。そうした先人たちの教えに感謝すべきであろうが、我々の理解も進化し、発展しなくてはならない。数十年前、原子転換はマクロビオティックの重要な1柱と考えられてきたのかもしれない。その証拠を探し続けるのも悪くはないが、理論そのものが間違っていたかもしれないと認める心構えもしておくべきだろう。信念とポジティブ志向が人生にプラスに作用することもあるが、結局マクロビオティックは、希望的観測ではなく、事実に即さなければならない。

 QRの実験と直近の実験結果について私と議論してくれたエドワード・エスコーとアレックス・ジャックに感謝したい。彼らの今後の実験の前途を願いたい。
 原子転換と核物理学は非常に複雑なテーマである。上述してきた内容Macrobiotics Today誌の記事に合うよう単純化した。関心のある読者は、より詳細な議論が掲載されているサイトwww.OhsawaMacrobiotics.comの参照を勧める。Macrobiotics Todayタブをクリックし、読んで頂きたい。

*訳者註:詳細内容に関しては赤字で訳出。

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼マティアス・グラビアク
ドイツ出身。1988年、フランクフルトのthe Johann Wolfgang Goethe Universitätで理論物理学の博士号を取得。ソフトウェア産業で働く一方、引き続き物理への関心を抱いている。関心のある方は下記に連絡。
lenr@grabiak.net
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「Transmutation-Reality or Macrobiotic Fairy Tale原子転換―現実か、マクロビオティックのおとぎ話か?」は日本CI協会・編集部が和訳したものです。

GOMFの連絡先は下記となります。
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英語版を読みたい方は下記のウェブサイトをご参照ください。
http://www.ohsawamacrobiotics.com/pdf-downloads/macrobiotics-today-pdf-summer-2014-detail