ニューヨーク講演⑪桜沢如一
桜沢 統計なんてものは絶対信頼してはいけませんよ。統計とか新聞とかいう奴は皆ウソばかり言うんだからね。何でも人の言ったことを信用する。そこで判断力が必要になってくるのですよ。これは本当かウソかどういう意味を持っているのか?例えばカイロプラクティックというのがありますね、あれはどういうものか。やってもらったことがありますか?
―やってもらったことはありませんけどあれは背骨のゆがみを調節して神経の圧迫されているのを直すというのでしょう?
桜沢 どうですか、どう思います?
―理論としてはいいと思いますけどね。
桜沢 あなたは?
―まぁやってもらったら気持ちがいいですね。だけどただ気持ちがいいというだけで・・・
桜沢 貴方はいかがでしたか?
―あれは説明で聞いたことがあるんですがその、からだの中でなにかこの器官が病気をもつ悪いところがあって血行が良くないところを針を刺してそこを刺激して・・・。
桜沢 いやカイロプラクティックはね、今こちらがおっしゃったように脊椎を矯正するだけです。針は使いません。だからカイロプラクティックという。カイロプラクティックというのは手の療法ということです。
―あんまとは違うんですか?
桜沢 知らない。カイロプラクティックで食っている人は五万人以上あるでしょう。アメリカではね。大きな大学までありますよ。カイロプラクティック大学。カイロプラクティックドクターというのはたくさんありますよ。
―日本人も一人やっているね。
桜沢 貴方はどうですか?
―やったことがないんで知らないです。
桜沢 うーん。知らないって・・・。批判を求めてるんです僕はね。あなたがたは批判をちっともいわない。感じを云ってる。気持ちが悪いとか良いだろうとかね。
―体中痛いだけ。
桜沢 そういうことを聞いているんじゃない。わたしは貴方の批判力を聞いている。貴方はカイロプラクティックというものを何と裁判するかということを。感情で好きだとか嫌いだとかいうのはもう下の下ですよ。そんなことは犬でもやります。人間ならそれは悪いものである、いいものである、何々がゆえにと、そう判断と判決理由をつけていわなけらばいけない。
自己批判なきものは皆滅びるのです。日本の沖縄でね、ひめゆり女学校の生徒二百人がね、先生と共に皆死にましたね可哀想に。皆自己批判なきものなんです。ただ政府から押し付けられたとおりやってそれで玉が落ちてくるのを待っていてそれで死んでしまった。自己批判をする力がないんですね先生にも生徒にも。あなたがたは自己批判をしないのちっとも。
―カイロプラクティックなんてものを知らないんですもの。
桜沢 だって今いったじゃないですかここで。脊椎を矯正するものだって。
―でも脊椎を矯正できますの?本当に。
桜沢 あぁできますよ、外れているのをちょっと元に戻せばいいんだから。そんなことなんでもない。
―永久に治ったらそれは結構な療法ですな。又戻るんじゃないですか?
桜沢 とにかくね、批判力がないねあなたがたは実に。あきれちゃうね。よく生きてこられたね今まで。
―日本の柔道などで外れたのを治すことを教えますね。
桜沢 それは整骨。それは外傷による。
―あれとはまた意味が違いますか?
桜沢 全然違う。こっちは自然に起こるもの。自然に骨が外れている。批判力ゼロですね、あなたがたはまったく。そうするとね。人間の判断力というものは一番初め、一番弱い判断力―めくらというのです―二番、感覚的というのですね。痛いとか気持ちが良いとかいうこと。三番、感情的、悲しいとかうれしいとか。四番、知的判断力。五番、社会的判断力。六番はイデオロギー思想的。七番は最高判断。あなたがたのは皆一番か二番ですよ。訳が分からない。それから痛かったとかね。もう実に低いものですね。
第二判断力では、とても幸福にはなれない。健康というのは幸福の一部ですからね。それで一生懸命にわたしは初めから話しているんですがちっとも分かっていないですね。驚いちゃうね。どうしたらいいかね。このあいだ白人のクラスで善とは何であるかといって問題を出したんです。それがたった一人ですが今日までのところ、立派に回答を出した人がいるんです。どうです。一つ言って御覧なさい。一体善とは何です。善悪の善。
―社会的にいいますと人様に迷惑をかけない行いをしているということが善じゃないですか、まあ主なことから言えば。悪をしないということでは同じことになりますけれど・・・。悪の反対ということでは・・・。
桜沢 それは意味がなさないね、それじゃぁ悪とは何ぞやと。それでいわなきゃ意味がない。どうですか奥さん。善とは何だ、この世の中で善をしなけらばならんということは覚えているでしょう?どんなことですか?
―宗教的に言ってあの・・・
桜沢 宗教的でも科学的でも何でもかまわないですよ。善とは何かに対する全面的回答をしてご覧なさい。
―自分がいいと思うこと・・・。
桜沢 それは大変だ。泥棒がいいと思うことをしたら皆えらい迷惑を受けるじゃないですか。そんな馬鹿なことをいってはだめだ。商売人がいいと思うことは自分が儲かれば、鼠の糞に砂糖をかけて売ってもいいと思うことでは駄目だ。おまけにこのあたりの判断力の人が、自分がいいと思うことをやったってそれは駄目です。
―社会的に批判して・・・、
桜沢 はぁ、まあこれで分かったでしょう?あなたがたは一番肝心な善とは何だってことがわかっていないんだ。まず人生始まらないんだねあなたがたは。ハハハ滑稽だね。白人なんてのはまったくこんなこと考えたことの無い奴ですよ。貴方がた以上に陰陽には縁の遠い奴ですよ。それがちゃんと解いたのですよ。感心しましたね。ドクタークロマイヤーというのですがね。これもまぁ馬鹿な男でしてね。
―陰と陽とが良く調和されたということでしょう?
桜沢 陰と陽の調和も・・・まだ陰と陽が分からないのだからそれはできないんじゃないか?その肝心の陰陽が分からないのだからね。どうしてそんなことになったんだろうね。これはもう頭が癩病にかかっているかね・・・うーんこれねー。
それではもっと具体的な問題。ここにねディッシュパンハンドという病気が有るのを御存知ですか?知らない?よく水仕事をする人の手にできてくる病気。水虫。それは恐ろしい病気になっているんです。ここでは絶対治らないから。それに対して医者はね、ただゴムの手袋を使えということを言うだけで治す方法を知らない。どうです、これは批判してご覧なさい。
―先生、それはゴムの手袋をしなくても・・・
桜沢 それは治りません。人間の人体には10兆の一万億倍のばい菌が付いているんですよ。全体に。それすっかりアルコールで消毒したってすぐまた後から10兆ついてしまう。一面空気中にいるんだからそんなものは意味をなさない。
―それは水分が多いために陰が多いためにそういう病気が起こるのか陽が多いためなのか・・・
桜沢 陰の物を少なくすればいい。まあそれだけでも結構です。トコロテンだね貴方は。押しだしたら出てくるハハハ。皮膚の病気は全て陰性の時に出てくる。外が陰性で中が陽性だってことは初めから分かっているでしょう。心臓だの何だの陽性な物はみな中にあって神経だの皮膚などどいうのは皆外にあるものですね。
この皮膚の病気というのは陰性の過ぎた病気に決まっているんですね。水が過ぎるかビタミンCが過ぎるかタンパクが過ぎるか油が過ぎるか。脂肪分。あるいはポタシューム、野菜、生野菜ね。そんなものを食いすぎるかするとみなくる。砂糖はもちろんです。それだけやめればどんな皮膚病でもすぐ治ります。
―先生この間八十の人がこのダイエットしだしたらポツポツかゆいと言っていましたね。ブツブツができてね。私もこのへんにできて来たんですよ。これどういう訳でしょう。
桜沢 それは考えてご覧なさい。それは何か知らずに陰性のものを食っているか或いは前にたくさん食い過ぎていた奴が残っているかそれが掘り出されてくるのかどっちかです。だから悪いことをしなければちっとも心配しなくていい。
―そのうちに治りますけどね。
桜沢 それなら中から出て来たんでしょうかね。この人間の体というものはこういうふうな細胞というものの集まりでできているんです。ちょうど大きな家がレンガでできているようにね。こういうやつが何十兆といってあるんですね。ところがこの間を血液が流れているんですがね。血液が一秒間に三十メートルという恐ろしい勢いでね。この川はだね、びゅーっと流れている。だから切ればぴゅっと出るでしょう。その血液がすべての酸素と食料をもってくる栄養をね。そしてこれに一つ一つ配給しているんです。それからそれらが吐き出すゴミ、CO2といったってゴミなんで炭酸ガスですがこれを全部もって行く。
これを渡してはこっからこれをとってもっていって又肺にいって肺でこれを皆出してくる。それで又新しい酸素を積み込んで又降りて来て回っているのですね。この血液の中にある悪いものは十日で皆無くなります。どんな病気でも。ところがこの中に悪いものが入っている病気ですがこれはなかなか出て来ない。金城鉄壁な細胞膜というのがあってこれは出るのが非常に難しい。水だけは出たり入ったり自由にするのです。
ところがナトリウムだとかカリウムだとかカルシウムだとかいうものになるとここでいちいち誰何されておまえは何者だと入り口でいわれ一定の量があるものは中に入れられない。ところが長年悪いものをやっていると皆これが中に入っているのです。ところがこの真ん中の王様は―といってポタシム英語ではね。ところがところがその外を歩いている血液の王様はナトリウム、塩。カリウムというのは反対のもの。それで貴方がこう運動する、こう運動する。運動するときには必ずこの女王様が少し出るんです外へ。女が少し出る。そしてナトリウムが中へ入る。始終このナトリウムとカリウムだけは交替している。これが交替できないと運動ができない。塩が少ない中に入るのが少ない。それで運動が自然にのろくなる。
大きなでぶちゃんなんてのは実に運動がのろいでしょう?痩せこけたほっそりしたがっちりした奴はきりきりやりますね。これが多いから。でぶちゃんは駄目ですね。そんな訳でね。ところがこの中に病気が入ってしまうと3ヵ月ぐらいかかる。宇賀島さんの病気なんかはすっかりこの中に入っていた。細胞の中に。細胞自体が変化していた。これをこういうふうにこの間、セルとセルの間にあるやつね。血液の中にある悪いものをインターセル、それからこの中にあるものはイントラセルというんです。イントラセルの毒とインテルセルの毒と二色ある。
こちらのほうだとすぐ治ってしまう。十日で完全に治せる。ところがこのインテルセルとなるとどうしても2、3ヵ月かかってしまう。それ貴方のでもやっと今頃になって出て来たでしょう。いつから始めたんですか?
(つづく)
1995年8月号