ジュリア・フェレー
ウォーレン・クレイマーは世界的に知られるマクロビオティックのカウンセラー、講演者、料理講師であり30年の経験があります。ボストンで彼の妻・ファティムと息子・アダムと暮らしつつ、10年以上、道夫を支えてきました。ウォーレンはクシ・インスティチュートと(デニー・ワックスマン主宰の)Strengthening Health Institute(SHI)講師陣に名を連ね、妻と共にMacrobiotic Center of New England(MCNE)を主宰しています。ジュリアは2014年3月に彼とインタビューする機会がありました。
ジュリア(以下J):
インタビューを受けて下さってありがとう。あなたがマクロビオティックの世界で活躍されてきたこと、大変尊敬します。マクロビオティックはどのくらいされているの?キッカケは?
ウォーレン(以下W):
30年もマクロビオティックに関わっているよ!すごく不思議な出来事の連続で知ったんだよ。テニスの奨学生として大学にいて、卒業する時になって、自分が何をしたいのかはっきりしていなかったんだ。だから1年ブラブラして、1年後には大学院に行こうと思ってた。その間、ニュージャージでテニスをバイトで教えてたんだ。ある日、クラブに女性が料理を教えに来たんだ。クラブには電子レンジでピザを温めるのに使う台所があるだけで、そこに彼女が鍋やプライパンやらを持ち込んできたんだ。指導している時に彼女が到着するのを聞いて、会いたくなったんだ。クラスの後、マクロビオティックについて質問したんだ。実をいうとホンの好奇心だったんだけどね。彼女は食べ物についてアスリートの僕よりも断然知識が豊富だった。
二つの事が起こったんだ。先ず、彼女の料理を食べ始めた。野菜ばかりで最初は好きじゃなかったんだけどね。でもそれは、今まで自分が食べてきた食べ物―ジャンクフード、甘いモノ、ピザ―と体を調整する際の反応だったんだ。
J:テニスにも変化がありましたか?
W:信じられないほどだよ!まったく違うんだ。もっと早くコート上で動けるようになったし、柔軟性も増して、身体が軽くなった気がしたよ。スッキリして集中できるようになってた。練習の回数も減らしたんだ。大学でテニスをしていた時にこれを知っていたらな、と思うよ。
もう一つの事っていうのは、料理の先生のCynthia(シンシア)がある教室の会にゲストを呼んでいて、そのゲストが何とElaine Nussbaum(エレイン・ナスバウム)だったんだ。
J:まさか。
W:エレインは彼女の話(食事とライフスタイルを変えることで生殖器のガンが回復したこと)をしてくれて、自分の何かが変わったんだ。マクロビオティックは現実的で、力強いものだと感じたんだ。次の年の夏、シンシアに連れられて初めてマサチューセッツのグレート・バリントンのサマー・カンファレンスに参加したんだ。テニスのラケットとボールも持っていったんだよ。ある休憩時間に、テニスコートに行って、そこでプレーしていた2人の女性に会ったんだ。テニスのレッスンをしてあげて、数時間くらいプレーしたんだ。二人ともボストンにスタディ・ハウスを持っていることが分かり、Mary Kett(メアリー・ケット)とCari Wolf(カリ・ウルフ)は二人ともKIで教えていたことがあって、カリはKIの講師陣に尚連ねていたんだ。
二人は自分がマクロビオティックをどう生活に取り入れているのか聞いてきて、ブルックリンにあるどちらかのスタディ・ハウスに移ったらと提案してくれたんだ。1993年の秋に引っ越したよ。
J:スタディ・ハウスでの生活はどんな感じですか?
W:共同生活の家で、6~10人くらいの人が住んでいたよ。その頃、マクロビオティックについて沢山勉強したよ。スタディ・ハウスでも、毎日KIのクラスにも通いつめて勉強したよ。スタディ・ハウスでは、実践的な側面を学んだんだ。それぞれが責任を持ち、みんなで台所を手伝っていた。料理して、手当法を学び、治療法を学んだ。あらゆるもの―餅、パン、テンペ―を作って、そこに長く住んでいる経験者に習ったんだ。だいたい2年くらいした後、僕とJill Gusman(ジル・グスマン)という女性でハウスを管理するようになったんだ。
J:ハウスはどのくらいの間、管理したの?
W:だいたい4年くらいかな。それからKIがバークシャーに移り、ボストンでの事情が変わったんだ。僕はハウスから出て、別の場所に移ったんだ。ある日、久司道夫の秘書だったCarolyn Heidenry(キャロリン・ヘイデンリー)から彼の記録を書きとめる仕事をしないかと連絡をもらったんだ。
J:素晴らしいチャンスですね!
W:道夫の隣でコンサルテーションに参加できたのは、すごい勉強だったよ。11年間、道夫のメモを取り、学んだんだ。僕の名前をメモに書いておいて、何か質問があれば、僕の方に連絡ができるようにしたんだ。道夫のスケジュールに合わせて働いたんだ。彼がいない時はクラブでテニスを教えたり、料理も教えたよ。
そうこうするうちに、テニスと道夫の仕事を別々に分けた生活を送ることがだんだん難しくなってきたんだ。特に、生活のためにテニスを教えるということが難しくなったんだ。同時に、マクロビオティックに対する関心が高まってきた。テニスの活動を結局やめて、マクロビオティックのほうにシフトすることになったんだ。家庭にあがり料理を作り始め、たくさん料理の仕事をしたよ。だいたい午前中の9~12時の仕事が終わったら、次は午後の1~5時までの仕事をする、みたいにね。
それからまた変化が訪れた。ある日、メリーランド出身のカップルにコンサルテーションをしていたら、どうやってマクロビオティックを学んだらいいのかと道夫も聞いてきたんだ。道夫は彼らの自宅に一緒に行くように自分に言って、それから6年半の旅が始まったんだ。
J:どのくらい一緒に住むことになったの?
W:1週間から1ヵ月くらいだったと思う。他人の家に行くことで沢山のことを学んだよ。必要なことは何でもやったよ。料理、治療薬の処方、指圧、エクササイズと食習慣の記録付け、しっかり噛んでいるのかを確認したりもした。すごく忙しくて、最後の方は、神経が参ってしまっていたよ。
J:まあ、どうされたの?
W:オーストラリアのシドニーに住むある家族に2週間指導をしていたんだ。その最後の方に、ニュージーランドに住む大病を抱えた男性が自分と一緒に来てくれっていうんで、一緒に行って彼を助けたんだよ。向こうは冬でアメリカは夏だったから、大きな変化が生まれた。帰国後すぐさま、友達がマイアミにいって自分の両親(二人ともガン)を助けてくれっていうんだ。すごく疲れていたけど、とにかく行ってみた。2日後、そこの娘さんが何かに気づいて僕に聞いてきた。「ウォーレン、あなたは凄く頼りになるわ。でも大丈夫?」何かがおかしかった。僕は謝って、もうヘトヘトな状態だった。捧げるものが空っぽだった。それが最後の料理の仕事になったんだ。
病人相手の仕事が自分に負荷をかけてきてたんだ。自分が病気で飽和状態になっていた。ガンの夢を見て、それが襲ってくる夢を見てた。必要な休息時間や食事を取れていなかったんだ。
J:どうやって対処したの?
W:6ヵ月かかったよ。予定を減らして、静かにして、食事を正した。人生を何をしたかったのか、考えたんだ。そうしたら宇宙が信じられない形で答えをくれた。Marsha Rueff(マーシャ・リュエフ)という女性から連絡があり、アトランタに来て、彼女のコミュニティで指導とカウンセルをしてほしいと言ってきたんだ。4日間そこに行って料理教室、レクチャー、カウンセリングをした。すばらしかったね。すごく気に入ったんだ!それから、マーシャの妹(or姉)のBetty Berger(ベティ・バーガー)からセントルイスに来るように連絡をもらったんだ。それから仕事が伸びてきて、たくさんの都市と繋がって、今の仕事になってるんだよ。
J:人の助けになりたいと思っている人がたくさんいると思いますが、仕事と個人の欲求をどうバランスさせようかと考えています。ご経験から、どのように対処したら良いと勧めていますか?
W:それは僕にとって良い学びの経験だったよ。今、自分の身体を大切にしているからね。一番は食事を一度も抜かないことかな。一日をどう過ごすかを決めるのが大事だよ。マクロビオティックをやっている人に(典型的に)問題が出ているだけじゃなく、一般社会にも問題が現れてきていると思うし、日々、どう生きているかということも食物と同様、大事だと思う。Denny Waxman(デニー・ワックスマン)はこのことを指摘しているし、的を得ていると思うよ。玄米、みそ汁、ケールを食べて、マクロビオティックをやっていれば健康になれると考える人は多い。僕はデニーと同じように食習慣に焦点を置いてるよ。決まった時間に食事を食べる、座って食べる、夜遅く食べない、などね。
食事を構造的に捉えることは大切だよ。秩序が恩恵を決めるんだ。ストレスを抱える人が余りにも多い。だから過食するし、不適切な食物を食べ過ぎたり、健康な食物を食べる意味をそもそも失ってしまっている。秩序がないと生活が混沌となる。食事の時間が遅いと、血糖値が下がり、過食してしまう。立って食べると、身体は食事をしているとは思わない。クルーズでこのことを冗談で取りあげたんだ。アイスクリームを食べるイベントでビーガン・アイスクリームを食べてもいいけど、とにかく座って食べよう、ってね。
J:身体が食物をもっと良く受け入れてくれているわけですね。
W:そうだね。その瞬間に存在しよう、ということだね。座って、噛んで、その場にいて、楽しむ。パソコンに夢中になったり、ニューヨーク・タイムズを読んだりしながら食べている人が多いね。僕が大事にしているのは、食事をどう捉えるかという点だね。新しいセミナーでは、“Manage your condition to manage your life(体調を整え、生活も整えよう)”というタイトルでやっているよ。
J:素晴らしいタイトルね!
W:体質は変わらないけど、体調を調整・調節することはできるよ。それを学ぶ方法が大切。これはマクロビオティックの素晴らしい点の一つだよね。マクロビオティックとビーガンの決定的な違いは、秩序があり、独特な構造を持つということだよ。
ビーガンということは、動物性食品を食べないということだけど、構造的に物事が組まれている、という訳ではない。多くのビーガン食の人が砂糖を大量に摂るし、食品の質を考えもしない。ビーガンであることは素晴らしいけど、マクロビオティックはもっと素晴らしいよ。
J:(クルーズで)カウンセリングをされる際に、ビーガンの人はマクロビオティックとの違いを質問されますか?
W:Sandy
Pukel(サンディ・プケル)は、「マクロビオティックとビーガンの違いを教えてほしいの」という質問が一番聞かれる質問と言っているよ。僕は”Macrobiotics 101”というクラスで質問に答えるようにしているけど、1500人が乗っている船で半分の人に答えるのも厳しいよ。1回のレクチャーで150人が限界かな。
J:そうよね、部屋のサイズもあるし。でも、違いは何なのかしら?
W:まずは構造と秩序だね。マクロビオティックは食事とライフスタイルに対し秩序だったアプローチをとる。この秩序が食習慣とライフスタイルに繋がる。どう生活を送るか、ということにね。
次に食べ物の質だね。有機食品、料理、(加工)食品とかのね。有機の果物、野菜、穀類や豆とか(身体に)良い原料を買うように知識をいれていかないといけない人がたくさんいるよ。料理の仕方、味付けの仕方をみんな良く学ぶ必要があるよ。あとは食品の問題もある。いままで食べてきた食品を変えて、大豆ベースの模擬的な食べ物を食べるようになってきているよね。この食べ物を考えるのが大切だよ。例えば、そうした食べ物の多くはナトリウムの含有量が多い。こうした点がビーガンと違うところだね。
J:食習慣を整えたい場合、私たちができることはありますか?
W:僕のところに来るのは何か停滞しているというか、頭打ちになったと感じている人が多いね。何年もビーガン、ベジタリアン食をやっていても体重が減らない人、健康上の問題を抱えている人、血圧が落ち着かない人とか。たぶん血糖値に問題があるのかもしれないね。
クルーズではMacrobiotics 101、パート1&2、という一連のクラスをやって、食習慣を整えてもらっているよ。実際、前回のクルーズでは、450名の人が過食の人だった。食習慣を整えるための情報が求められているんだね。
僕の実感として、みんな自分の体調に対してハッキリとしたことが分かっていれば、食習慣を整えるようになるんだと思う。例えば、リューマチ性関節炎を抱えている人はビーガンになって、トマトや豆腐チーズケーキをたくさん食べれる。トマトと豆腐チーズケーキを減らせば、自分の身体がぐっと変わる。マクロビオティックはそうした考えや、食事が健康にどう影響を及ぼすのか、ということをハッキリさせてくれるね。
J:ビーガンの人向けに作れたソーセージやチョコレート・エナジー・バー等の商品がたくさんありますが、 ジャンクフードとしらないで食べてしまっている人もいると思いますが。
W:本当にそうだね。ダブル・チョコレート・ケーキからビーガン・ケーキに変えるのは良いステップだけど、根っこから健康を改善したいと望んでいる人にとって、それだけでは不十分だよ。
J:コンサルテーション後に患者の方々に現在の体調を伺ったりされていますか?
W:だいたい、4~5カ月後に僕に相談するように提案しているよ。特に彼らの町に寄った際とかにね。1回のコンサルテーションでは質問、疑問に答えれないことがよくあるからね。コンサルテーション後にメールしてもらっていいし、それに対して請求とかはしないし。どこでも連絡が取れるようにしているし、個人的に質問に答えるのが好きなんだ。
J:患者の人の体調は劇的に変わりましたか?
W:変わったね。成功しているよ。為になるのは、クラスを受けて、料理を勉強して、レクチャーに参加もしているということだね。サポートが得られやすい環境にあると、自分達が何をしているのか理解が促されるからね。僕なんかはボストンの自宅からサポートできるだけだけど、彼らの家とかを何度も訪問するのも好きだよ。年に数回やってくるチアリーダーや監督みたいなもんだね。地元の地域社会にサポートがあるのは必須だね。
J:どちらに行かれるのですか?
W:15年でたくさんの場所に行ったよ。メイン州ポートランド、イリノイ州スコーキー、フロリダ州ジャクソンビル、オレゴン州ポートランド、ワシントン州シアトル、メリーランド州ゲイザースバーグ、カリフォルニア州ロサンゼルス、ハワイ州ホノルル、ジョージア州アトランタ、ミズーリー州セント・ルイス、カナダのトロント、アラスカ州カシロフ。ニューヨークやニュージャージのたくさんの場所だね。
J:すごいスケジュールね!French Measows Macrobiotic
Summer Campにも来て頂きたいわ!
W:是非そうしたいね。夏はもっと時間が取れるからね。
J:奥さまと息子さんにお会いできるのも楽しみです。お二人ともお元気ですか?
W:息子のアダムは5歳で、大好きな学校に半日通っているよ。息子は凄いんだ!生まれてからずっとマクロビオティックをやってるよ。餅、海苔、豆腐、野菜が大好きなんだ。僕の場合、子供の頃に食べてたケチャップが野菜と言ってよいものだったのに、息子はソテーしたブロッコリだからね!父親であることに感謝しているし、僕自身も変わったよ。遊んだり、楽しんだりすることをたくさん息子から教わったよ。
妻のファティムもすごいんだよ。彼女はフランス出身で、ボストンにあるフランス文化センターで教えているよ。アダムにはフランス語でしか話さないから、バイリンガルだね。僕が教えていたアムステルダムのクシ・サマー・カンファレンスで出会ったんだ。僕たちは素晴らしい関係だよ。僕のマクロビオティックに関する活動を全て手伝ってくれる。自宅でイベントを開いたりもするし、新しい場所を見つけようとしていて。家族とクラスの場所が別々になるようにね。彼女なしには僕が毎日やっていることはできないだろうね。
J:マクロビオティックをうまく続けるコツはありますか?
W:まずは、よく計画を立てることかな。日々の食事のプランをしっかり立てて、良い構成を整える。食事を抜かないこと。みんな忙しいから、構成と秩序を整えるのが鍵で、それによって違いが生まれてくるよ。あとは、できれば料理教室を受けることかな。
地域社会は役に立つね。料理ができて、それを共有できる人がいるのは素晴らしいよ。もちろん、あちこちにマクロビオティックのレストランがあれば、便利だけどね!ないなら自分で創らないとね。
J:ヘルマン相原はイノチの意味と大きなゴールに心を動かされる話をしていました。マクロビオティックの哲学が有用なのはどうしてでしょう?
W:マクロビオティックのゴールは、より大きな視点を持つことだと、僕は思うよ。身体に良いモノを食べ、身体をケアする意味は、人生でやりたいことをできるサポートをすることだよ。ヘルマンは自由について話しているし、道夫は夢の実現について話していた。自分がしていることに幸せを感じている人は少ない。情熱を持つことも難しいようだね。料理の仕方を習うのは簡単だよ。でも、今の世の中で健康な生活を送るのは簡単ではないよね。
バランスの取れた生活を送り、自分の本当の糧となるような物事に移行するのは簡単じゃないけど、自分が大好きなことに集中すれば、食べ物のお蔭で、自分が好きなことをできているってわかるよ。食物は目的ではなく、始まりだよ。
食べるために生きているのか、生きるために食べるのか?生きるために、命を養うために食べてるはずだよ。
J:ありがとうございます。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△ ウォーレン・クレイマーは、29年の実績がある世界的なマクロビティックのカウンセラー、講師、料理の先生です。その間、何千人もの人の健康を回復してきました。ウォーレンは、クシ・インスティチュート、SHIの講師陣に名を連ねており、Macrobiotic
Educators Associationのメンバーです。健康と健全に対しマクロビオティックの面からアプローチする方法(食べ物選択と調理の際の原則、エクササイズ、仕事、人間関係)を教えています。6年間あちこち旅をしながらシェフをしながら、世界中のガン患者の病気を改善するよう努めてきました。現在、世界中の9つの都市で指導しており、10年以上、久司道夫をサポートして来ました。彼と妻のファティムは、Macrobiotic Center of New Englandを運営しており、息子のアダムがいます。詳しくは下記に連絡ください。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
GOMFの連絡先は下記となります。
E-mail:gomf@earthlink.net
http://www.ohsawamacrobiotics.com/pdf-downloads/macrobiotics-today-pdf-summer-2014-detail