ニューヨーク講演⑬桜沢如一
桜沢 結局人間てものは仕様のないものだ、すべて自分の罪業は自分で償わなければならないようになっている。それは陰と陽ですから陰だけまたは陽だけで多く食い過ぎたらどうしてもバランスがとれないから傾いてくるんですね。だからほかの人が罰を代わって受ける訳には行かない。口から入ったんだからね。口から入って他人の腹の中に入ればいいのだけれど、口から入ったら嫌でも自分の胃袋に入るから。
―先生それで陽性のものばかり食べた人はどうですか?
桜沢 それは悪いですよ、もう気が短くなって乱暴になってね、わたしでも昔塩がきいて三〇前後でしたね、とにかく十八歳から塩をうんと利かしたんです。だから、二十五、三〇なんて時分にはもう陽性も盛りでね、三〇人も人を使って仕事をしていましたが誰も彼も朝から晩まで叱り飛ばされているんですね。それはひどい陽性でしたよ。
―わたしのところで働いている人は朝から晩まで人を叱り飛ばしている人なんです。
桜沢 それじゃあ、きっと陽性が強い、肉が過ぎているからね。わたしのは塩が過ぎていたんですね。それでも三〇歳以後は塩を抜くことばかり研究していたのです。あなたがたには塩を取ることばかり考えてもらいたいですけどね。わたしは一遍塩が過ぎた人間ですから。どっちでも同じですよ病気は。塩が過ぎても灰汁が過ぎても砂糖が過ぎてもどっちもいけない。冷たさが過ぎても凍えてしまうし熱が過ぎても焼けてしまう。水火の中を行かなければいけない。
―でも、その人はキャンディーを食べるとすぐに顔が破れる、皮膚が破れる・・・
桜沢 それは陰性が入ったら誰でも・・・カミソリの跡でカミソリ負けってのがよくあるでしょう、男で。あれ皆砂糖が入ってるかバターがはいっているか陰性の物が入っているか入り過ぎているか動物性たんぱく質もしくは砂糖。だからわたしは顔を見るとすぐこの人は何を食べているかすぐわかる。
―先生こらは別の話ですけれど、非常に神経衰弱で少し変になりかけている人でもう5年もたっているような人でも治りますか?
桜沢 治ります。十年たっていても治ります。「
―精神が少し朦朧としてはっきりしないような人でも?
桜沢 今ここで一番の問題になっているのはシゾフレミーという病気ですね。精神病で時々非常に荒いかと思うともうこうしてじっとしたきり動かない。分裂症。これになったら絶対に治らないですよ。今それの専門のお医者さんが二人来ています。それがこの食養を教えだしてから自分でもやっているんですね患者に。成績が良いんだね。喜んでますよ。
―精神病を三年、五年やって困って入る人がいるんですが薦めてあげても治るものでしょうか?
桜沢 そう、あなたに愛さえあればね。愛がないと駄目ですね。それで人を治してみるのもまぁ三〇〇人治してみると一人前になりますよ。三〇〇人なんてわずかなことですよ。お医者さんは一年に何千人て診るんですから。わたしは一日に一〇〇人診た事がありますがね忙しい最中は。閉口しましたよ。陰陽が良く分からないと駄目なんだ。あなたがたは考えようとしないから難しいんです。あなたがたはあるくときにいつでも陰陽であるいているでしょう。右左右左。ものを診る時はどこか効き目で見ている。二つの目で見ている事はない。それはこの間証明しましたね。なんでもそうなんですよ。ものを聞くのでも利き耳というのがあってどっちかが動いていて片方は休んでいる。手でも右利きの人と左利きのひとといる。肺でも陰性になったら陽性になり陽性になったら陰性になるという運動を何にも命令もしないのにやっている。
―先生さっきのカイロプラクティックの話はどうなりましたか?
桜沢 それはあなたがたの批判がでないから駄目です。
―でないから教えて下さらないのですか?
桜沢 僕はものは教えない。ただ陰陽だけは教えますけどね、それを応用して判断をする事はあなたがたの仕事。それまで教えたらあなたがたは永久に奴隷になってしまうから。
―良い悪いが分からないですよカイロプラクティックが良いものなのか悪いものなのか。
桜沢 それは自分で判断しなければ・・・それができなかったらうまくない大変だよ。
―この間リマ先生が疎開した時に、うどん粉かきびの粉が陽性なのが陰性になったといわれていただどういうことかよくわからない・・・
桜沢 それはくさったら陰性になりますよ。腐ったらみな酸っぱくなりますよ何でも。そば粉は土曜を越したらもう駄目です。そば粉ってのは陽性ですから。空中からたくさん水分を吸いますからね、そして土曜になってくると熱がでてくるから自然に腐って酸っぱくなり使えなくなる。
―缶の中へいれていても?
桜沢 それはどんなことをしても駄目。それは天地宇宙の法則にはかないません。
―それではドライカントリーだったらそうならないのですか?
桜沢 ドライでも熱の変化でね、例えば日本から米を積んでインド洋を通ってヨーロッパへ行きますね、そうすると船の中でインド洋を通ってヨーロッパへ行きますね、そうすると船の中でインド洋をとおりましょう?インド洋は暑いでしょう?ところがハッチの中はぴったり閉めてあるから空気が流通しない。入ると百度以上の温度ですよ。なんにもしないのに・・・ただ米が吐き出す息だけでね。それで米の質はすっかり変わってしまって味が落ちてしまってね。
そば粉なんかとても送れません。カボチャの芯が苦いでしょう?苦いカボチャがあるでしょう?中のわたが・・・それは陽性が過ぎているからなんです。苦いっていう事は陽性なんです。ということを、だれも知らなかった。そしたらコロンブスは俺は知っていると言ってこつこつと卵の角を壊して立ててみせた。こんな訳で賭けを儲けた。実にコロンブスの卵よりまだ簡単なんです。陰陽の問題は。しかもそんなインチキはしないんだから。
―そば粉食べさせたんですか?
桜沢 そう、そばなんです。
―高価につきませんか?
桜沢 それがここでは高価につくんですね。ところがね欧州は輸入のそばが何万トンしなかった。それは四分の一の値段。これで支那という国の農業がいかに発達しているかわかるね。一反歩で四〇石取れるっていうのだからね。
―こちらで支那料理にそば粉を使いませんね?
桜沢 使いません、あれは奥地の料理ですから。支那の農業の写真を見ると驚きますよ。毛沢東の支那では茎の長さが六尺、その上を歩いても倒れない。えらいものですね。葦のような太さなんだ。それはもうだれも信用しないですよ。仕方がないから写真取り寄せて見せてやった。それで初めて日本の人も驚いた。日本の農業なんてとても・・・
―それは先生肥やしで大きくさせるんですか?
桜沢 肥やしは使わない。
―でも先生そばなんて荒れ地じゃなくちゃ育たないでしょう?
桜沢 もちろんそばは荒れ地に決まっている。肥料をやったらそばはできない。えらいもんですね、支那は。もう将来はソビエト、その次は支那が世界帝国になるでしょうねこの調子では。もうアメリカの負けたのは完全に分かっている。今度僕はおもしろい論文をひとつ書いたのですよ。二〇枚ほどタイプライターで叩き上げたんですがね。世界帝国米国の死亡診断書というタイトルです。米国は死んだと、恐ろしい題をつけたもんでしょう?それを見て皆喜んでますよ。これは酷いけれども愉快だってね。
ほんとうにこれ、国民の中の九〇〇〇万人が慢性病で登録されているのってこれはもう国家として成り立ちませんよ。その一人ひとりがですね、一日に十ドル支払っているとしたら三六〇〇億ドルになりますよ。日本の金にしたら一八〇兆円ですよ。それだけ毎年損している、もうそれはどうしようもないでしょう。しかも病院は五〇年前の二倍になっている。病院のベッドの数は。国民は二倍になっていない、ただ八割増えただけ。しかるにベッド二倍にしてまだ足りない。それは精神病がおおくなったから。精神病として二五〇〇万人あるというのです。本当に入院しているのは七〇〇万人あるそうです。
恐ろしい国ですね。だから僕はシネマに行って見るたびに思うんですがマンガが出てくるでしょう?もう実に幼稚というか奇妙キテレツな映画ですね。くだらない意味も何にも無いただ殴り合いして勝ったとか負けたとかいう。立派な精神病ですよ。何にも精神的な感情もなければ情緒もない。これはもう国民としては精神的には死亡しています。肉体としては九〇〇〇万人が病気しているんだからこれは死んでます。アイゼンハウアーは一九五五年の国会で、今生きているアメリカ人の中で二五〇〇万人はがんで死ぬことになっていると叫んでますよ。そしたらアイゼンハウアーの心臓の病気を看取ったポールホワイト博士ってのが昨年、米国は世界一不健康な国であると言った。もう完全に米国は死亡しているのですよ。
黄金文明、機械文明は完全に死滅した。特にソビエトがぐーっとのしてきて月の世界までとってしまったですからね。完全に負けた事を自覚している。これが黄金文明タイムイズマネー、マネーイズタイムという思想をもっているものの行く末ですわ。旅路の果てですね。その中であなたがたは大きくなったのですよね。おかげを被っているのでしょう?だからやがて巻き添えはくいますよ。オンザビーチという映画みましたか?見ていらっしゃいおもしろいですよ、一九六四年に米国が原子爆弾で完全に滅びてしまうところの絵が出てくる。だから僕は死亡診断書というのを書いた。
―あんまり物が豊富すぎるんですね。
桜沢 そう、豊富すぎるということは虚栄心が強すぎる、享楽が強すぎる。ぜいたくと享楽ですね。快楽を求める物、これが過ぎたのです。それでじたく乱費、その成れの果ての姿が今日の米国なんです。毎朝ゴミ取り屋の車をみてご覧なさい、高価な物がどんどん捨てられていくじゃないですか。あたらしい買い物袋が毎日捨てられて行くじゃないですか。
高いファイバーで作られた奴がね。タンスだのタイプライターの机だのまで持って行ってますね。ほしいような物もありますね。ガラスの書棚なんか良いのがあったよ。そういう事を言うんですね、そういうことを口実にして金儲けをしている。だけど国が滅びてもいいですか?
これが西洋文系というものの末期ですね。死亡診断、これを日本語と英語とフランス語で同時に発表します。
(つづく)
1995年10月号