ニューヨーク講演⑩桜沢如一
―先生のご本はいつ来ますか?
桜沢 もう来ます。もう着いているはずなんです。17日についているのです予定では。だからもう27日だからね。あした必ず電話して返事して。今年中にはみんなの手に入るでしょう。今日ね、ここでお話しするようなことは本にはありませんよ。病気の治し方とかなんとかはありますけれどね。あなたがたの頭の改造ということはない。口と口でね、面と面と向かい合ってでないと言えません。本を書くのにはみな牛の子がその人間になってないと分からない。これは皆さん考えて下さい。どう言ったら物心一如、色即是空、空即是色を言い換えられるか。柳は緑―これも陰陽と云うことを教えるために書いているのです。春ともなればこういうふうになると。世の中は移り変わりの早いものである。うたかたの流れ行く水の泡のようであると云うことを書いてあるのですね。有名な詩人が書いているのですね。-どうですこれ一番難しい問題。どうして陰と陽ができたか。それから陰陽無双原理を利用してコンクリートに何とかして雪が積もったらすぐ消えるような方法は出来ないだろうか。それはね、歩いていると無数にそういう問題が起こってくるというのですね。こいつは今になんか発明すると思いますねこれは。どうです、何にも考えないんですかねあなたがたは。
―別にそんな―夢みたいな話ですから・・・。太陽はなぜあったかいんです?
桜沢 太陽はちっともあったかくないですよ。
―いやあったかいです。
桜沢 あなた行ったことがないから知らないんです。―に地球があるでしょう。太陽はどっかこの辺にあるんですからね。その地球の周囲には100マイルほど大気層というのがあるんです。空気や何かね。それをポンと外に出たら太陽は見えないんですよ。何もみえないんですよ。光も何にも。何もない真っ暗闇です。太陽ってなものは暖かい物じゃあない。太陽からくる波がね、ここにはいってね、この分子に激突します。ここで熱くなるのです。ここで光り出すのです。ここまでは絶対に見えない。丁度こういうふうな真空管があってここからレントゲンが出るでしょう?X光線がね。ここに貴方が立っているでしょう?すると貴方の胸を通ってこちら側に出てる。何も光は見えないですよ。ただここにあるキーボーダーに影が映るだけなんです。ここに光というものはないんです。このキーボーダーが邪魔するのではじめて光が出てくるのです。太陽ってのは暖かいものじゃない。もうそれだけでもひとつ勉強になったでしょう。問題を出せば無数にありますよそりゃあ。
どんな問題でも答えるのが無双原理なのです。いいですか。初めに云ったでしょう。馬鹿が、大学で特別な研究もしないのに、大学の先生に解けない問題を解けるようになるのがこの無双原理の徳なんです。だけどそれは練習しなければなりませんよ。
―それは結構なお話ですがね先生。
桜沢 例えば貴方の病気なんかどうして起こったのか、そして一体どうなるのか、ちっとも質問がないんで不思議でしょうがないのですがね。
ところがですな、多くの皆さんは私はこう考えているんですが、直接衛生法、健康法に関係のあるようなこと或いは食事に関係のあるようなことをですな、幾たりもお伺いしてそしてその決定的に知りたいと思うのは主な人の考えだろうと思うのです。ですから―のことやら風邪のことやらそんなことを質問している余裕がないのだと思うのです。
それは今言ったとおりでね。私の答えは二度繰り返す必要は無いですよ。何でもいいんだというのです問題は。無双原理の陰陽で解くことを練習するのが一番必要なのです。
―陰陽のことは私は何遍でも聞いてはっきり覚えたいとこう思うのです・・・。
桜沢 いやいや、それはとても陰陽で食物だけ深くやろうとしても駄目なんです。何でも陰陽で練習しておかなければ食物にも応用できないのです。陰陽という遣り方ですね。貴方はすっかり思い違いしている。無双原理というものはそういうものではない。全て幸福を作り出すものなのですよ。そのうちの幸福の一部分が健康なのです。幸福というものはここに五つ書いてあるでしょう?寿命の長いこと、財力の豊かなこと、無病なこと、徳を好むこと、天命をもって終わること、この五つあるのだと。そのなかのたった一部分が健康ということなんだと。その全部を保証するのが無双原理なんだと。こう言ってお話したでしょう一番初めに。その願いが分かっていないなら勉強したって無駄ですよ。
―それはわたしもこの陰陽というのが実際よく分からないです。
桜沢 それは遣ってみなければ分からない。
―どれだけそれがその生活に・・・。
桜沢 例えば水泳を習うのに右を出して左を出す、左を出したら右を出すと、こういうふうに陰陽とやるんだといわなくったってこれがはたして海の中泳げるかどうかなんて考えていたのでは駄目で遣ってみなければ駄目なんです。
―それはそうです。泳ぎなんてのは私はだいぶ遣りましたが、赤十字では人を助けるのに片手で泳がなくてはならない、横になって泳がなくてはならない。それが人によって泳ぐ向きが違う。それがいったいどうなるのかと質問したことがあります。そしたら、先生も知らないというのです。右と左になるのは初めから備わっているのではないかと思うんです。
桜沢 それはそうですよ。みんなその人その人で違いますよ。全てあなたがたはその、初めのお話しからちっとも分かっていないんだな。
―いえそれはね、ほんとうにあれですよ、えー陰と陽てのはあるって云うのは分かっています。でもそれほど大切なものであるかというのはちょっと・・・。
桜沢 それはね、北と南というのがあるということは分かっている。けれどそれが我々の生活においてどれくらい必要かということは分かっていないというのと同じですね。ところがこの東西南北が分からなかったら一歩も歩けませんよ。外に出てね、これから家に行くのに俺の家は北にあったか南にあったかそれを見分けることが出来なかったら一歩も歩けない。人生で陰陽というのが分からなかったら一日も生活できない。
―まあね、そういいますとちょっとね。私らは英語も何にもね。しゃべれないんですよ。―忘れてしまってね。それでも喋りだしたらようやく喋れるようになりました。考えてみると日本語を喋るのにいちいち、さ行変換なんて考えなくても喋れるでしょう。
桜沢 そんなものは学者が便利上後からつけたのです。
―ですから陰陽もそんなものではないですか?
桜沢 冗談じゃない。陰陽というものは学校で教えたものじゃないんです。自分で自然に自得するのでなくては駄目です。本能の発露なんです。本能の判断力なんですから。これはどこの学校でも教えないんです。ここの大学校でも教えないですよ。私でもこれご覧なさい、まあ白人ばかり捕まえて講義しているんでしょう。英語ってものを習ったことがないんですよ。文法も知らない絶対知らない。英語の文法を勉強したことがないのですから。ただ読んで書いてみて覚えているだけの話ですから。
―文法なんてそんなものじゃないですか?
桜沢 だから必要ないですよ。
―我々日本で習うとはじめから文法とかなんとか・・・それで日本の人は英語がよかったですよ、日本で英語習ってきたものは・・・。
桜沢 英国で一番偉いシェークスピアという劇作家小説家ね、これが文法知らないんだそうです。知らなかったそうなんですってね。だから彼のハムレットだのオセロだのにはずいぶん間違った文法があるそうです。これはシェークスピア文法というものになって今は認められているなんてね。
―ある本を読みましたら文法というものは年代によって変わってくるというのですね。
桜沢 ああそれは変わりますよ日本語でもね。
―だいぶ前の文法と今の文法と違う・・・。
桜沢 そんなね、人間がこしらえた知識じゃないんですよ陰陽ってのは。これは天地宇宙とともに初めから在るものものなんです。男と女、昼と夜、山と海なんです。もうこれ知らなかったらこれの方向を知らなかったら幸福にはなれっこないと。それで病気になるんだと。不幸になるんだと。ここに来ている医者で二回離婚されたのがある。もう一人女でね。もう美しくなった娘が有るんですがね。僕ははじめ40ぐらいかと思っていたらまだ30なんだというんですね。それにもう三分は白髪なんです。それで聞いてみたらこれはここで一番有名なお医者さん。ドクトルソロモンという人でその旦那さんが57なんだそうですが、患者として行っているうちに親しくなってついに俺の妻になってくれといわれて、私は私の青春を捧げて彼を全人類の貢献者にするために結婚した。ところが3年の間に5回人口流産をやらされた。そして毎日毎日ビタミンCの注射ばかりやられてこんなになっておなかはこんなになるし足はこんなに豚の腹みたいになってるのです。汚くて初めて来たときはびっくりしましたね。妊娠4、5か月かと思った。そんな人が居ますね。これはみんな自分の判断力が悪いからなんですよ。相手の夫がどんな夫だか見分けないで結婚したからです。そういう風な学校で教えられなかったところを判断する力を付けるためにここでやっているので、あなたがた学校で教えるような知識をここで求めようとしたらそれは間違いです。
―それは、そうじゃないです。陰陽というものは、それほど、ま、なかなかね、なかなか・・・。
桜沢 みんなだから何遍も申し上げたようにね、不幸というもの不自由というもの平和がなくなるということネ、こういうことは全てこの陰陽の原理を知らない人にだけあるのです。こんなに大事なことをお話しているのに、さっぱり一人も分からない貴方がたはね、まったくもう、はっきりしているので。西洋人のほうがよっぽど偉いですよ。今日は一人、明後日だ、特別賞をあげるひとがあります。あんまり良く出来るんでね、日本の人にみんな貰ってもらわなければならないのにね、駄目だね。実に里真と話しているんですがね、どうしてこう日本人は分からないのだろうか?
―日本の人はね、生半可に陰陽という名前だけは知っている。それなら西洋人みたいになんで何時陰陽なんて出来たのかな、どこにあるんだ、なんてそういう愚問は出てこないんですな。まあ、愚問といっては悪いけども・・・。聞き方も上手いですな。陰というものはどんな格好をどんな色だとかどこにあるんだとかこういう言い方になるんですな。それよりも我々の場合は直接身体に関することを愚な質問かも知れませんが・・・。
桜沢 それは、この間からお話したようにね、あなたがたは一つ一つ電球なんですよ。その電球全部に灯を付ける電気がね、宇宙の陰と陽という発電所から来てる。その元が分からなければ直ぐ切れてしまいますよ。それは分かってますか。
―それは、分かってます。
桜沢 それならば何故もっとこの陰陽の具体的な応用法を早く見出してもっと大きな光を出してもっと幸福になる方法を何故研究しようとしないんですか。一人もあなたがた直接食い下がってくる人がないです。あなたがたの中には。もう、白人の中には朝の二時、三時まで残っていく人がいますよ。なんだかあなたがたは小学校の生徒みたいに先生のいうことをもう一所懸命覚えたらいいと思っているらしいんだね。駄目なんだよ、ここじゃあ何にも教えない。あなたがたの陰陽の判断をこう、尻叩いていくだけの話なんだから。それではね、ここに船がありますね。 船はここにロイド線というのがあって、これから下は全部真っ赤に塗ってありますね。大きな船は。何故?
―錆びないようにでしょう。
桜沢 錆びないため。うん。それはみな分かってますね。錆びを取るから。それが間違い。錆びないためじゃないそこは。
―そればかりではなしになにかその海草が引っ付いたりその・・・。
桜沢 そう、カキがくっつかないためにやってある。貝殻がくっついて一年そのままにしておくと船の速力が二割落ちてしまうのです。それで一年に二回はドックに入ってこんこん叩いて落とすんですよ皆ね。
―ペイントはそれをよけるためにするんですか?
桜沢 避けるためにね。避けるためにしてあるとするとこれはいいですか悪いですか?赤いペイントですよ。
―やむを得ずやらなくてはならんことでしょうな。
桜沢 うーん。そこらで陰陽が必要になってくるんです。それが分からないと何十万円損するか分からないんです。
―荷物が何トン入ったということがおおよそ分かるのではないですか。
桜沢 そんなことはもうその上にちゃんと印が入っているからね。カキ、貝殻ってものはなんですこれは?陰性ですか陽性ですか。
―陰性です。
桜沢 陰性?そしたら赤なら余計引き付けるじゃないですか。陽性だから引き付けるじゃないですか。陰と陽なら引きつくじゃないですか。それなら赤い色を塗ったらだめじゃないですか。紫色か藍色に塗らなきゃだめじゃないですか。これに全部藍色か紫色を塗ったら一航海ごとに何万ドルというのが儲かります。カキがくっつかないから。だれも知らないだれも。
―ヨーロッパの船はブルーに塗っている・・・。
桜沢 船底を?
―いいえ外から何かをグレイにしてある。
桜沢 底だって言いますよ。底じゃない。
―たいてい赤ですな。
桜沢 ああ、たいてい赤です。船底塗料というのは決まっているんだから。これは西洋人のばかな所なんです。赤を塗っていたらものは寄り付かないだろうと思ってる。
―魚がこわがると思っている。
桜沢 と思っているんだね。ところが陰性のものは皆引きつけられていく。
―日本の船はどうですか?
桜沢 日本でも皆そうですよ。
―くっつきますか、貝が?
桜沢 赤い奴は皆隠れちゃう一年航海したら全部隠れちゃう。小さなこんな奴は皆くっついて動かない。
―紫にしたらどういうわけになるのですか?
桜沢 周りにつかないじゃないですか。そういう簡単な頭でおるから病気をするんですよあなたはね。その造船業界の偉い大学の造船技術のプロフェッサーなんてのはこんな人ですからね。人民の名も無きものがよって来て話したって何が分かるものですか。陰陽が分からないから貴方。絶対無駄ですよ。今アロンゾーさんが新聞を持ってきましたが、今度は食品の科学薬品添加するのを禁ずる法令があるのはすぐに動き出すそうです。今日から。ニューヨークタイムスに出てますからね。ところがこういうものは皆だめなんです。この前チキンが注射で大きくなってると。ところがその注射はガンをこしらえるものなんだと言うことが分かったら皆貴方チキン売れなくなったでしょう。そしたら商売人はもっと賢いですよそれは。ポンド10セントにしたんだ。そしたらひと月で売れる分が一日で売れてしまったというんですね。余計売れちゃった。そんな訳でね、・・・の知識がないために毎日損しているのですよ。インド人なんかのほうがよっぽど賢い。いまだに粉を挽いてそれを自分でこねてチャパティというもの、ここで時々やるでしょう、あのチャパティというものをこしらえて焼いて食っているのです。ふくらし粉も何にもいれないで。
―インド人は暇があるからじゃ無いですか?
桜沢 そんなことはないですよ、暇がある訳じゃないですよ。それはやっかいですよ。朝晩それを頭に載せて板に載せてその上に並べて行き来してますがね。命が尊いか時間が尊いかね、どっちが尊いです?
―アメリカの人は時間が尊いらしい。
桜沢 それが大きな間違い。タイムイズマネーと言うのです。そこの国に貴方はもう流されて来たのです。ところがタイムイズモアザンマネーなんですよ。タイムはマネーを作るけどマネーはタイムを作らないんです。タイムというのは金では買えないものなんです。そこに大きなミスがあるんだね。
―長生きすることからいくと貧乏な人間が一番短命なんでしょう?
桜沢 そりゃそうですよ。チャパティだけで生きてるんじゃないから。チャパティだけで生きているんなら長生きするでしょうがね。日本人でもそうでしょう、米だけ食ってるならもっと長生きするはずなんだが、ところがここじゃ六十七歳まで生きるってことになっているんでしょう?でもこの間お見せしたリポイゾンインユアフードという本によるとですね、もういろんな学者が攻撃してますよ。今九千万人の慢性病者が登録されている、一億八千万の中で九千万人が登録されている。登録されない奴はまだあれですよ、それが慢性患者として登録されている。それじゃこの国は病人の国じゃないですか。いくら長生きしたって何にもならない。
(つづく)
1995年2月号No.689