2014/06/16

免疫力を高めよう(Strengthening Immunity )パート2


ボブ・リゴンBob Ligon
















強い免疫系を獲得するためには命の物理的(肉体的)側面とエネルギー的側面の統合が必要です。

 パート1では腎臓の強化のように、免疫系に関する食事など他の肉体的習慣にフォーカスを置いて述べてきました。パート2では、免疫系を強化するエネルギーの側面―精神、感情、スピリチュアル―に焦点を置いてみたいと思います。

 先ずはHealing with Whole Foods, 3rd editionの著者であるPaul Pitchford(ポール・ピッチフォード)の次の引用をご紹介します:

「免疫系を強化する上で最も重要な原則を一つ挙げるとすれば、自らの人生で孤独を避けるという姿勢である。人々の間で隔絶が感じられる場合、そこには未解決の感情の問題が存在する。それを解決しようとするならば真摯な寛容さと生起する(してきた)全てに対する無条件の感謝が必要であろう。中医学では、過去の怒りを取り除くことで妨害という川の流れが滑らかとなり、その結果、滑らかで活力に満ちた防御的、その他のエネルギー循環が生まれる。怒りを持って自らを傷つけるということは、生理的真実と実際言える。怒りを解消するという作業が実行されることで、食事やライフスタイルの選択が整ってくる。この作業無しに人は過去の未解決の食事やライフスタイルから抜け出すことはできない。」
47頁)

制約と流動―Constraint and flow
 パート1では、健康と治癒の土台として循環―血、栄養素、微量栄養素、エネルギーを細胞に運び、細胞活動の副産物を細胞から排除するために移動させる活動―という考えを紹介しました。滑らかで滞りのない循環が免疫系を強めます。パート2においても循環は中心的な概念ですが、ここではエネルギーの循環を扱います。

 エネルギーの循環という観点から免疫系の働きを理解するために、私は制約と流動という考えを採用します。制約とは、動きが遅すぎる、あるいは完全に止まっている肉体的、精神的、感情的、スピリチュアル的な状態です。
 制約を感じるのはどのような状態の時でしょうか?何かしようと試み、願い、行い、言い、考え、感じ、あるがままにおり、向かいあい、動かし、変え、表現した際、それに対し妨害され、防御され、挫折感を味あわされ、減退され、消耗させられたと感じたら、それが制約と言えるでしょう。エネルギーの制約は、精神的な硬直や傲慢、感情的な憤怒や失望、スピリチュアル的な争いの結果もたらされる可能性があります。例えば、当面の不正に対する怒り、過去に対する遺恨、不十分な感情および/または肉体的な愛情、当惑した恐怖や疑いや心配、家計の逼迫、感情的な混乱と困惑、スピリチュアルな信念に対する不信などです。

 こうした類のエネルギーの制約を、(全ての人ではないとしても)大方の人は経験したことがあります。制約のためにエネルギーと血の自由な流れが妨げられます。エネルギーをその源とする制約は、最終的に肉体を疲弊させ、賢人がよく言うように、痛み、臓器の機能不全、ありとあらゆる病に繋がります。制約により肉体的、精神的、スピリチュアル的なエネルギー調和の取れた流れが妨げられ、免疫系が弱められ、不都合で不快な結果に至ることになります。建設的に解釈すれば、そのような経験は当人がバランスを壊していることの警告であり、その後の酷い苦痛を免れることができることを示唆する情報でもあります。

 逆に言えば、流動とは自由で調和とバランスのとれたエネルギーと血の転換でしょう。制約と対比すると、流動とは変化、移行、転換、柔軟、適応、可変、許し、感謝と特徴付けられるでしょう。命のエネルギーに流動を生み出す意見に耳を傾けることで、成長、発展、健康、精神的・感情的・スピリチュアル的な健全さが獲得できます。物質界において流動状態を保ち続けることは不可能であるかもしれませんが、その状態を大いに、より頻繁に、長い期間味わうことはできます。

意思決定
 ここからは流動が生み出されるプロセスをより詳しく見ていきますが、その前にエネルギーの観点から健康に対する制約と流動の役割を理解する際の意思決定について少し触れておくことが適切でしょう。

 私たちは相対的な二元論の世界に生きています。陰陽のような分析概念はその良い例でしょう。物質界において私たちが経験するものは二元的―表裏、上下、左右、寒暖―なものです。意志決定をする際、複雑な選択をAまたはBの二択に絞りましょう。ABを注意深く捉え、考えると、片方が制約、もう片方が流動と感じるでしょう。ABの差は微妙かもしれませんが、違いはあるのです。相対界において完全に5050のモノはなく、それは陰陽そのものと言えます。どちらか片方への偏りが必ずあります。そのため、制約と流動も二者択一と捉えることができます。片方がほんの少しであったとしても流動のエネルギーを持っているはずです。特に、実践性、受容性、エゴ欲に出くわした際、流動という選択肢を選べる機会があるのであれば、より健康的な選択肢であるエネルギー的真理を追い求める勇気を持ちましょう。そうすることで大きな痛みや苦痛から逃れることができます。

個人の真理とジョージ・オーサワ
 私は、ある状況の奥深くにある真実と現実を見極めることで、エネルギーの制約から解放され、流動が生み出されるということに気づきました。事実、ある事柄の真実を認めようとしないことは最も重大な制約と言え、文字通り息がつまり、エネルギーと血の流れを止めてしまいます。ここで言う真実とは個人の真理―心の中で真実であり正しいと知っている事柄―のことです。他人には理解しがたいものかもしれませんが、理解してもらえるものである必要はなく、個々人特有の真実です。私たちは自己責任のもと、その事実を無視し、否定し、歪めているのだと思います。個人の真理を否定することは、命の力を制約することです。意識的に命の力を制約することにより、ありとあらゆる病が起こってきます。これこそエネルギーの観点から見た健康です。

 さらに言えば、個人の真理を認識することは、神性なエネルギーとの交流を図る一つの方法です。神性なエネルギーと結びつくことで私たちは全体性を感じ、今世における目的を知り、真の運命という途上にいることを知るのです。この神性なエネルギーとの関連を持つという選択は、私たちが「せずにはいられない(can’t not do)」と表現する状態を創り出します。

 ある選択を「せずにはいられない」と捉えることは、「しなくてはならない」とする見方よりも力強いものです。「しなくてはならない」という見方は、強制や義務を暗示し、私たちが拒絶し、後悔し、後々変えたい、とする見方を生みます。「せずにはいられない」という見方は、警告感や圧迫感が全くありません。多くの研究と経験、再考の後、「せずにはいられない」選択という真実に向き合うと、私たちの良心がスッキリし、心と精神が自由になります。自らの決心が常に命を創っている力―命の力、神性なエネルギー―から発生するため、全てが良く回ります。強い免疫系とは、こうしたさらに大きくスピリチュアルな結びつきが増幅された副作用なのです。

 私の理解では、ジョージ・オーサワ(GO)が世界に伝えようとしていたのはこの類の自由だったのではないでしょうか?ヘルマンがGOと一緒にいた思い出について語っていたのを聞いていた際、私が最も印象に残っているのは、各個人が自らいかに考え、判断力を高めたらよいのかをGOが教えていたという話でした。レクチャーを行い、弟子に質問を投げかけ、その答えが各個人のオリジナルなものであれば褒めていたようです。宇宙の秩序についてのレクチャーでも、「自分で証明せよ」と伝えていたのだと想像できます。これもまさに真実の自分(真我)のことを言っているのでしょう。自分で証明せよ!あなたの人生で「せずにはいられない」と思うことは何でしょうか?

個人の事例、臨床の事例
 25年ほど前、私がカリフォルニアのGOMFで働いていた頃、中西部での仕事のオファーがありました。一見すると魅力的に思えましたが、いくつか先約がありました。プロジェクト周辺の停滞感が高まってくると、そうした先約に手が回らなくなってきました。引っ越しが迫った1週間前、アパート内でパンパンに詰まった荷物に囲まれ、リビングに仰向けに寝そべっている自分に気づきました。身体を動かすことができず、重力(エネルギー)が自分を床に貼り付けにしている感じでした。それでも、そうした情報を無視し、動こうと努めました。その3日後、車のエンジンが故障し、修理に3週間かかることが分かりました。その後、なぜこのような現状になったのかということがようやく附に落ちました。自分にオファーをくれた人物に電話し、行くことが出来なくなったと伝えました。興味深いことに、「腑に落ちた」時、心が軽く、安堵感が出、まるでこれが最初から正しい選択であったかのように感じました。それに気づくまでに若干の苦境を得なくてはならないだけでした。

 臨床の観点から言えば、よく見かける制約として2例挙げることができます。積極的に発言しようとしない(消極的である)ことがその1例です。この傾向は女性に多く見られます。片頭痛、甲状腺関連の症状、心臓や呼吸器疾患はそのごく少例です。こうした女性は、自分の真の感情をいつも内に詰め込み、憤怒という圧力鍋を作っています。そしてある日、上記のある症状が不思議と不可解に現れてきます。

 別の例として、男性限定の話として前立腺に関する問題が挙げられます。私は、長年にわたり前立腺関連の症例やガンの事例に取り組んできましたが、あらゆる事例において私の患者は、物理的・肉体的な親密関係に関するフラストレーションについて指摘していました。親密さに関係したフラストレーションを抱える全ての人が前立腺に問題があるわけではありませんが、医学的に認識されている前立腺の症状のうち、この種のフラストレーションを抱えていないケースはありません。

流動を生み出す―ステージ1
 制約を減らし、エネルギーの流れ―命と活力の流れ―を回復させる上で役に立つ3つの段階・過程がある、と私は考えています。最初の段階では、制約は存在するということを認めることです。この段階では、先ず長い間における自分と外界との関係パターンに気づくようになります。例えば、多くの患者の中には子供の頃、厳しく両親―たいていは陰湿で、威圧的な両親―に非難されたと訴えてくる人がいます。実際、子供は皆、両親から認めてもらいたいと望んでいるため、批難を耐え、楽しみ、対処していこうとする努力は多くの意思決定の動機付けとなり、大人になってからの状況や人間関係においても同様のパターンを確立することにつながります。

 ある日、ジェーンという患者が、肉体的には何ら問題がないにも関わらず私のもとにやって来ました。実際、ジェーンは健康的で元気で活発的でたが、感情的な病気を抱えていました。彼女の一番の悩みは、悲しいと感じる時間が非常に多く、突然発作的に泣いてしまうということでした。彼女は何年にもわたりパートナーから口頭虐待を受けてきました。特に、彼女のパートナーが博士号を取得している一方、修士号しか取得していない彼女のことを知的に劣っているとパートナーが非難してきたようです。最終的にはお互いに破滅的な行動を起こし、二人の関係は終わってしまいましたが、より深く観察してみると、似たような結果を招いた恋人関係を2回、ジェーンが経験していることが分かりました。彼女が認知できないままでいたさらに痛切な事実―10代の頃、母親に人を楽しませるような人になるように育てられ、それ以来、彼女に褒められたことがなかった―が明らかになりました。幼年・思春期時代に母親から受けた批判じみた無数の口頭虐待の例をジェーンは紹介してくれました。例えば、「スポーツウェアを来たら地味に見えるじゃない!もっと魅力的な女の子の服をきなさいよ!」、などの文句です。大人になった今、彼女は口頭虐待などの振る舞いを普通のように―むしろ愛情表現と―受け止めています。口頭虐待というパターンが命の制約となっていると気づき、彼女は治癒の途についたのです。

ステージ2
 制約パターンを認識した後、次のステージでは誠実にそうした認識を検証します。私は、多くの人々が、ある制約パターンを把握しながら、それを変えることができない、あるいはすべきではない種々の理由を合理的に、さも教養があるかのように自慢げに話すのを見てきました。否定、偏狭、防御は誠実さの裏返しです。興味深いことに、知的な人であればあるほど否定や偏狭も狡猾のようです。そして実際、そうした理屈を乗り越える唯一の方法は、ある状況に遭遇した際に自分の誠実さにしっかりと向きあうことです。狡猾さ、否定、幻想は常に最終的に真実の自分に屈するものです。私たち一人一人に特有であるそうした真理とは、私たちが知ることのできる神性なものとの直接的な結びつきであると、私は理解するようになりました。マクロビオティックの言葉で言えば、それが宇宙の秩序というものでしょう。

 ジェーンも自分自身の例をもとにパートナーや母親の口頭虐待は一つの意見であり彼女個人の真実ではないと心から気づき、自分自身の真理のほうがパートナーや母親の意見よりも大切であると初めて理解しました。ジェーンが制約を流動に変える際に必要とした第2段階が、この検証作業なのです。
 では続けて第3段階をみてみましょう。

ステージ3
 第3段階はたいてい大方の人にとっては難しいものですが、同時に最も治癒効果が高いものでもあります。常に表と裏がありますね。制約を認識し、それに誠実に向かい合ったのち、行動を起こします。この時、長い間抱えてきた、最も深く、最も気を動転させるような恐怖が顕在化してきます。恐怖は本質的に私たちを委縮させ変化を起こすのを妨げます。物質界にいる私たちは変化を避け、現状維持を大いに好みます。変化とは何かをあきらめることですが、何か新しいものを手にする、あるいは創造することでもあります。宇宙が常に変化しているということは、私たちが皆、同意できる一つの現実です。変化するということは、宇宙の秩序を反映し、気やプラーナ、命の力などと私たちの身体とを同化させることです。そうしたエネルギーは創造性があり、単細胞や意識、遠くの星の化学的な変化の営みであるかどうかに関わらず、常に変化し、動き、成長し、進化しています。

 行動を起こす、ということは恐怖に立ち向かい、それを乗り越えていくことです。恐怖に身を任せるということは、制約を許すことです。自分の真理が導く恐怖を乗り越えていくことで流動が生まれます。それにより、真の独特的な自己ヴィジョンをもって自らを再発明する機会が生まれます。そうした変化は私たちの気分を爽快にさせてくれるもの以外に何ものでもなく、スピリチュラルな意味において、神性なエネルギーを感じることです。意識的な真の変化の瞬間、物質界の二元性を乗り越え、あらゆるモノのワンネス―気や神性なエネルギー、宇宙の秩序と調和した自身の滑らかなエネルギーの流れ―を感じることができます。

 上の例でいえば、ジェーンは自分に投げかけられた批判に対しハッキリと自分の意見を言うべきだったのです。当初の(パートナーや母親との)関係性を変えるべきでした。つまり、パートナーに対しては自分が何らかの意味で劣っていると言う意見を自分は受け入れないと主張することであり、母親に対しては、母親個人の観点・見方を尊重するが、ジェーン自身の真理は違うと主張することでした。ジェーンは真の自分を生かすために、勇気を奮い立たせ、愛情の否認あるいは拒絶という未来に立ち向かいました。事実、パートナーとの関係は終わりを告げましたが、母親との関係は復活しました。会話を交わす中で、彼女の表情は和らぎ、背筋を伸ばし、しっかりと背を整え座ることができるようになっていました。

執着と意志
 私は、次の考えは仏教に元があると考えています。

「執着はあらゆる苦難の源である」

この考えは最終的に2つの点を考えさせます。1)行動を起こすということは、長年続いてきた状況が変わることを意味するかもしれません。2)長い人間(恋愛)関係を築いてきた人は、それが今どれほど複雑に入り組んでいるのか、それを変え解消することがどれほど気をもみ、恐ろしいものであるのかを知っています。ただ、もし物事の真理があなたを導く場所が行動というものであるのならば、変化は必然でしょう。制約と知りつつ耐え続けることは、ありとあらゆる病気の温床を発症させる可能性があります。

 そのため、行動を起こす時には執着を捨てて起こさなければいけません。執着を捨て、成行きに身をまかせましょう。真理と誠実さに基づいた行動は、あらゆる生命を模している宇宙の秩序、気、プラーナ、神性なエネルギーの反映であるため、最終的に良い結果を生むと信じなくてはなりません。

 つまり、ここで書いてきたことは全て、あらゆる行動のもとには意志があるということを言いたいわけです。ある時点で私たちは決心し、行動を起こさなくてはいけません。変化は自然に発生するのではなく、自分独自のヴィジョン、自身の真理をもって起こさなくてはならないのです。そのためには、明瞭性、勇気、意志の力が必要なのです。

勇気を鼓舞する
 このことは大変難しいと思うのは私が初めてかもしれません。難しい理由は、最終的に起こすべき行動とは、つまり、何年にも渡り蓄積してきた制約を振るい落とすことだからです。このプロセスは人が自分と命やスピリットをいかに関係付けるかという点に統合されているため、破壊的で不安定なものではなくなっていきます。エネルギー的、肉体的な次元で命を統合していくことは、免疫系を強化する有効な方法であり、健康、幸福、夢の実現の足掛かりとなるものです。


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ボブ・リゴン氏は1989年から93年までGeorge Ohsawa Macrobiotic FoundationVega Study Centerに所属し、1992年から2000年までMacrobiotics Today誌の編集に携わる。年1回開催されるFrench Meadows Macrobiotic Summer Campで講師とカウンセラーを務める。98年サンディエゴのPacific College of Oriental Medicineで鍼灸と雑草学を学ぶ。マクロビオティック、中医学の知識を統合し自身の食生活、ライフスタイルのカウンセリング、ライフ・コーチングを行う。現在、オハイオ州アクロンで伝統的な中医学を実践し、カウンセリングとライフ・コーチングを電話でも行っている。予約は下記へ。
330-696-3385
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「免疫力を高めよう(Strengthening Immunity )パート2」は日本CI協会・編集部が和訳したものです。

GOMFの連絡先は下記となります。

E-mail:gomf@earthlink.net
英語版を読みたい方は下記のウェブサイトをご参照ください。

http://www.ohsawamacrobiotics.com/pdf-downloads/macrobiotics-today-pdf-spring-2014-detail