2013/01/30

Macrobiotics as a Spiritual Path(スピリチュアルな生き方としてマクロビオティック)

リノ・スタンチッチ(Lino Stanchich)



 マクロビオティックの目的の根本には、健康で幸福な良き人となり、他人が自分の夢を叶えることを助けることにある。

 1968年、革命の波がアメリカを襲っていた。ヒッピー達による「愛の夏(Summer of Love)」が過激なリズムの真っただ中、希望と喜びに踊っていた。そしてそれは愛、連帯、エコロジーという歌の元となった。戦争が激化し、反戦運動も過激化した。戦前の政治闘争と社会の団結がコントラストを生み出していた。この新しくダイナミックなニュー・エイジの状況の中、このビジネスマン兼レストラン経営者は新しい生き方、新しい世界を求めた。
 

 私が新しい人生を歩み出したのはその時代だった。幼少期はヨーロッパで戦地に赴き、青年になってからはオーバーワークとストレスを抱え健康を求めていた頃、是が非でもバランスを要求していた。その時代、他の多くの理想主義者と同様、私もマクロビオティックの哲学、食物、生き方を快く受け入れた。自分のスリーピース・スーツを台所用エプロンと交換するほどの入れ込みようだった。NYで有名なマクロビオティック・レストランである “The Caldron”での仕事に就き、自分を変えることにも挑戦し始めていた。
 
 
 

 44年間-最初はボストンで久司道夫・アヴェリン夫妻から、次にカリフォルニアでヘルマン・コルネリア相原夫妻と村元騰から-マクロビオティックを学ぶことを通じ、マクロビオティックの最高の教育者と革新者たちから力強く独得な教育を受けることができた。自然な健康、栄養、科学、指圧、料理、哲学、宗教などについての書物、レクチャー、クラスは私の最大の関心事-マクロビオティックの基本であり基礎でもあるスピリチュアルな自己変革(Spiritual transformation)-と密接に関係していた。現在私は80歳であるが、心はその半分の年齢のようだ。今迄で一番幸福に、健康に感じる。私のスピリチュアルな探険は、日々の意識的な食事、瞑想、エキササイズの実践に組み込まれている。
 

 今この年齢となり、これまでの経験を通じ得た持論は私の信念と見解に信憑性をもたらすかもしれない。私は、スピリチュアリティに対する意識は日々の習慣を通じ高めることができると結論づける。同様に私は、哲学者ピエール・テイヤール・ド・シャルダン(Pierre teilhard de chardin)が記した次の言葉に賛同する。「我々はスピリチュアルな体験をしている人間ではない。人間の体験をしているスピリチュアルな存在こそ我々である。」
 
 

 こうした考えに次のことを付け加えておきたい。

1. 私達は宇宙の全ての生命と繋がっている。肉体と心は一つであり、それが別のものであるという考えが多大な苦痛と苦悩を生み出した。肉体は「不浄」であり「邪悪」であるとする考えは真実とかけ離れている。多くの宗教では私達は神により創造されたとされているが、その信仰者、知識人、教育者は意識的に有害な食物を大食し、有害物質を摂り、向こう見ずな生き方をし、死を平和と幸福への扉であるとして待ちわび、自らの身体を悲惨に扱っている。マクロビオティックは健康を創り上げるガイダンスを与え、個々人の体調と条件に応じた食べ方の枠組みを提供する。しっかりと準備されたマクロビオティック食はRDA(推奨栄養所要量)の基準以上に美味しく、満足感をもたらす。自然なホールフーズを食べると私達の細胞は浄化され、同時に強化される。これを可能とする食事法は珍しい。静脈、動脈、内臓を浄化すると、エネルギーのスピリチュアル・チャネルも同時に浄化してくる。その結果、大きな平和、忍耐、調和の取れた関係を築くことができるようになる。

2. 地球、天国、全宇宙は生命のリズムと調和し、私達の細胞の振動と調和し脈打つ。木々、葉、鳥、虫、雲、穀物、人間、動物は家族となり、生まれながらの関係と敬意のもと生きられる。神は自然に存在し、自然は深く敬愛されるべきである。私達は自然の一部である。ソロウ(Thoreau)は、「天国は我々の足元と頭上に存在する」と述べている。外に出て星々、月、太陽、雲、空気の美しさと不思議さに驚嘆しよう。自然の純真さと美しさを守ろう。

3. 私達は毎分決断し、この世で進化し、スピリチュアルな発展を遂げる力がある。マクロビオティックの哲学を意識的に変化を生み出すツールとして使う方法を学ぶことで、陰あるいは陽のエネルギーを作りだしバランスがとれる方向へ生活を転換することができる。リラックスした状態、攻撃的な状態、集中した状態、陽気な状態を自ら選ぶことができる。

 マクロビオティックの生き方を構成する顕著な日々の習慣、慣習、方法がいくつかある。ここに挙げる主要なテクニックはヒーリング力の向上、体質転換、スピリチュアルな成長に寄与する。

変化を望む
 人は新しい生活法-新しい食事法やライフスタイル‐を望み、それを進んで受け入れ変化を経験しなくてはならない。変化は多くの人にとって難しいが、治癒力を高める食事を摂ることを通じ病気や痛み、停滞の原因を取り除くことができるということに気づけば、そのプロセスは容易なものとなる。数年にわたるカウンセリングを通じ、変化を受け入れることができない人を見てきた。こちらが推奨する変化を拒み、古くからのなじみやすい食物にすがってしまうのである。人は、時には病気になり、それに飽き疲れ、本質的な変化を望み、それを受け入れることが必要である。満足が得られ、治癒力を高める料理をするためには料理の研究が不可欠である。才能のあるマクロビオティックのシェフはそれを助けるレシピを多く作ってきた。

続ける
 多くの人は病気のためにマクロビオティックを始めるが、快復するとその原理や食事法を続けなくなる人がいる。他方で、それを続け、心的、感情的、スピリチュアル的な変化とデトックスをさらに続ける人もいる。そうした人たちは呼吸が楽になる、柔軟に動けるようになる、心地よく睡眠がとれる、安らかで穏やかに感じるなどポジティブな成果を経験する。ところが、こうした変化は困難や不快な症状、排毒症状を伴うことがある。動物性脂肪や白パン、白砂糖などの精製された炭水化物の摂取をやめると、身体がその変化に適用しようと体重が減り、皮膚の劣化、排泄の変化、寒暖の差、その他の排毒反応が現われる。その食事法を続け、変化を受け入れるには不屈の精神が必要だ。どんな健康プログラムであれ、それをスタートさせ続けるためには最高の健康指導が必要となる。

深呼吸する
 「スピリット」という言葉は「呼吸」の派生語である。語源学はこのスピリットと呼吸という言葉の関係を言い得ている。宗教についての書物もスピリットや生命の息づかいを描写している。空気は生命の最も本質的な要素であり、酸素なしに人間は数分しか生きられない。武術やヨガの行の多くは、健康、体質転換、スピリチュアルな成長のために意識的な深呼吸を強調している。道教信者(タオイスト)や中医学の思想は、エネルギーの組成元が呼吸と食物と教えている。拙著 “Power Eating Program: You Are How You Eat”で述べている通り、私は食べ物を噛む際に深呼吸することを薦めている。プラーナーヤーマと呼ばれるヨガの教えにある意識的な深呼吸を毎日実践することは生命活性テクニックでとして推奨される。これによりマクロビオティックの実践が100%以上の効果を持つようになる。

意識的に食べる
 マクロビオティックを実践する大多数の人は健康にとって食べ物が大事であることを理解しているが、よく噛むという習慣を怠っている。一口150回噛むという習慣を通じ血糖値が安定し、身体を大いに活性化する甘味が生まれる。よく噛むことでスピリチュアル・チャネルやチャクラ、内分泌系が解放される。私の言葉を信じず、自分で試してみてもらいたい。一人でもいいし仲間とでも良い。咀嚼と呼吸を合わせることは素晴らしく、真のナチュラル・ハイな状態になる。エキササイズも良い。食前には気功、食後は散歩することで消化がよくなり、30歳若返った気持ちになる。食事の前に感謝の気持ちを表すことは特に重要である。私達は感謝するものには事欠かない。食事の前に姿勢を但し、呼吸し、神やグレート・スピリット、宇宙に感謝の意を表そう。最後に、食べすぎに注意し、暴飲暴食や体重過多を避けるために満腹度は80%に留めておこう。

土に毎日触れる
 外で自然に触れ合う-森林や山の小道の散歩、朝露に砂場や芝生を裸足で歩くなど-時間が増えると、ヒーリング・エネルギーを身体とスピリットに運ぶ土のエネルギーや波動との繋がりが強まる。現在 “Earthing”と呼ばれ大きく取り上げられているこの健康法は、何年も前から久司夫妻、相原夫妻が推奨してきたものである。ハイテク産業、電子機器、放射能汚染が蔓延している世界では土との触れ合いを通しバランスを取らなくてはならない。孤立、憂欝、心と内分泌系の薄弱化を経験している人が非常に多いが、自然からの乖離がその原因の一部ではないかと考えられる。太陽を怖れ、電子機器を毎日使い屋内に閉じこもっている人が多い。実際に身体で土に触れることで活力が増し、身心が安定し、中心軸ができる。大都会にいても公園や土壌を見つけ、そこに行き、触れ合い、繋がることができる。直接太陽を見ずに地平線や木々の葉っぱを通して、あるいは日蔭からでも太陽の散光を見て、日光浴をしてみよう。生活が一変するだろう。

感謝を感じる
 古の言葉に、気のあるところにエネルギーあり、というものがある。思慮、信念、言葉に意識を向けることはスピリチュアリティの成長と肉体の健康にとって最も力強いツールの一つとなる。日々の習慣を通じ自分自身の理解を高めることができる。マクロビオティックを通じ、個人的、社会的な問題が解決し、地上に楽園を創造することができる。あなたの望む平和と幸福を実現し、より健康で充実した人生を送れるようになることを願っている。


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リノ・スタンチッチは高名なマクロビオティック・エデュケーター、栄養学者、マッサージセラピストである。2006年にアヴェリン・クシ・アワードを受賞。現在、クシ・インスティテュート・サマー・カンファレンスの講師陣に名を連ね、クシ・インスティテュート・マクロビオティック教育教会(Kushi Institute Macrobiotic Educators Association)の委員である。 “Power Eating Program, You Are How You Eat”、“Macrobiotic Healing Secret”、“The Natural Bladder Control Program”の著作や、数多くのオーディオやビデオのプログラムを制作している。アメリカ中に数カ所のマクロビオティック学習センターを立ち上げてきており、世界中で定期的に講義を行っている。
 
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「Macrobiotics as a Spiritual Path(スピリチュアルな生き方としてマクロビオティック)」は日本CI協会・編集部が和訳したものです。

GOMFの連絡先は下記となります。
E-mail:gomf@earthlink.net
英語版を読みたい方は下記のウェブサイトをご参照ください。
http://www.ohsawamacrobiotics.com/pdf-downloads/macrobiotics-today-pdf-jan-feb-2013-detail